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英国のEU脱退(「英国のEU離脱」)が知的財産権に及ぼす影響

英国のEU脱退(「英国のEU離脱」)が知的財産権に及ぼす影響

引言

2016年6月23日、英国(UK)は欧州連合(EU)の一員として残留するか否かについての国民投票を行いました。この国民投票の結果は、52%対48%で英国はEUから脱退すべきであるとの見解(英国の脱退、すなわち「Brexit」(英国のEU離脱) 」 を支持する見解) となりました。

首相がEUからの離脱の手続を開始することを承認する法律が、2017年3月16日に制定されました1。英国政府は、2017年3月29日に欧州連合条約第50条(2)に従って欧州理事会に通知することにより、EUからの離脱の正式な手続を開始しました。第50条の規定では英国とEUとの間の将来の関係も考慮した上で両者が交渉し、離脱協定を締結するまでに2年間の猶予が与えられています。協定が結ばれず、全員一致を必要とする延長もなされない場合は、EUの加盟国としての英国の資格は2019年3月に停止します。

離脱が正式に発効するまでは、英国はEUの正式な加盟国として存続します。中でも、既存の欧州知的財産権は第50条の交渉期間中であっても影響を受けずに存続します。

英国とEUとの間の将来の法的関係がどのような性質のものになるのかもまだわかっていません。英国政府は欧州経済領域(EEA)、いわゆる「単一市場」の加盟国またはEU関税同盟の同盟国として残留する意向がないことを表明しました2。この政策綱領(白書)において、英国政府はEU加盟国からEUとの新たな関係に移行するための「段階的実施手続」を模索する意向であることを表明しています。実際には、これは、現在の取り決めの少なくともいくつかの側面が継続する英国の離脱後の移行期間を意味する可能性が高いといえます。英国政府は、離脱日に1972年欧州連合(EU)法を廃止し、EU法のもとで以前施行されたすべての制定法を英国法に再規定する、EU(離脱)法案を2017年中に制定する予定です3。 離脱日時点のEU司法裁判所(CJEU)の広範な判例は、英国最高裁判決としての英国裁判所における拘束力と同じ拘束力を有します4。EUのすべての法律が具体的に修正または廃止されるまで有効であることを確実にすることによって、移行を円滑にすることが目的です。

英国のEUからの離脱の影響は、様々な知的財産権によって異なります。下記で、1) 特許、2) 補完的保護証明(SPC)、3) 商標、4) 意匠、5) 植物品種保護権(PVR)、6) 地理的表示保護(PGI)、7)著作権およびデータベース権、8) 商業秘密に関する実際の影響について考察しました。

皆様にご安心頂きたいのですが、ミューバン エリスが提供する欧州の知的財産に関するサービスが阻害されることはありません。私共はドイツのミュンヘンにミューバン エリスの事務所を新設する準備を進めています。英国政府と残りのEU加盟国との間の交渉が完結するはるか前、2017年にこの事務所の開設を予定しています。このことで、特に私たちが欧州の商標と意匠に関するサービスを全面的に提供し続けていくことが保証されるでしょう。欧州特許庁とドイツ特許庁に近い場所にあることに加え、この新事務所は、新たにできる統一特許裁判所の中央部のミュンヘン支部にも近い位置になります。

  1. 专利

欧州の特許は影響を受けず

英国での特許は、欧州特許庁(EPO)を介して国内ルートと欧州ルートのいずれかで取得できます。どちらも、英国がEUを離脱しても影響を受けません。また特許協力条約(PCT)にも影響はありません。PCTによる国際特許出願は、国内ルートとEPOルートを介して引き続き英国を指定することができます。英国は欧州特許機構の一員として存続し、欧州特許条約(EPC)は英国のEU離脱後も引き続き英国に適用されます。EPOはEUの機関ではなく、現在もEUに入っていない加盟国が10か国あります。

EPOから許可された欧州特許は、英国でも有効であり、今のところ英国の裁判所を通して権利行使することができます。EEA域内で特許権者の同意を得た一次販売による消尽を統制する規則は、英国がEUを離脱した後に変更される可能性があります。

EPOにおける代理も影響を受けず

英国を拠点とする欧州特許弁理士によるEPOでのクライアントの代理も、英国のEU離脱による影響を受けません。ミューバン エリスでは、1977年のEPO創設以来、EPOと協力関係を築いており、欧州における特許の法と実務の発展と適用に直接かかわってきました。多くの欧州特許弁理士からなる当事務所のグループは、この経験に基づいてこれからもお客様と協力し、欧州特許出願とPCTに基づく国際特許出願を利用してお客様の発明を保護していきます。

欧州単一特許および統一特許裁判所

一般に欧州単一特許(UP)として知られる単一の効力を有する欧州特許と、これに関連する統一特許裁判所(UPC)は、まだ稼働していません。 これを書いている時点では、UPCとUPの実施のための実務上の準備は継続しています。

UPC協定については、英国は必須批准国3ヶ国のうちの1つです(他2ヶ国はフランスとドイツ)5。 英国政府は批准の手続を継続しています。英国のUPC協定の批准に必要な二次的立法(特権と免責に関する)の最後の部分は、2017年に議会の承認を受ける可能性が高いといえます。ドイツ連邦憲法裁判所での異議申立により、UPとUPCが発効する予定は遅れています6。 UPCのウェブサイトによると、予定されている開始日は2017年12月以降に延期されており、ドイツの憲法裁判所での異議申立が認められないと仮定すると、現在のところ、2018年夏以降になると予想されます。

現段階において、英国がEU離脱後もUPCシステムの枠内に留まるかは不透明です。

1つの可能性としては、EUからの離脱と同時にUPCから離脱するのです。おそらく、第一審裁判所の中央部のロンドン支部は、EU加盟国の域内に移設されると思われます。UPCへの必要な変更は、英国とEUとの間の最終的な「英国のEU離脱に関する条約」への参照によって実施されることになるでしょう7。下記のEUTMでは、英国がEUから離脱する際に有効となる経過規定によって、英国を対象とするすべてのUPは、英国の国内特許として認定されるかそのように変更されると予想されます。この可能性では、英国のEU離脱によりUPの対象市場が縮小するでしょう。しかし、英国が参加しなくとも、UPおよびUPCは欧州における複数管轄区域での特許訴訟の費用を抑え、英語で訴訟を進行させる、歓迎される発展といえます。

別の可能性としては、英国と残りのEU加盟国がUPC協定を調整し、英国がUPとUPCシステムの対象として存続できるようにするというものです。この選択肢には実務上の問題がいくつかありますが(例えばCJEUの役目やEU法の優位性)、最終的な成果を得るための政治的な意志があれば、これを乗り越えることができるでしょう。

UPCにおける代理

UPCにおけるクライアントの代理手続は、UPCの締結国の裁判所において実務を行う権限のある弁護士と、適切な訴訟の資格を有している欧州特許弁理士に限られています8。英国がEUから離脱した後も、ここには英国を拠点とする欧州特許弁理士が含まれます。ミューバン エリスは、UPCが業務を開始次第、全面的に関与したいと思っています。

英国のEU離脱は、英国拠点の企業がUPを取得する上では何の影響も及ぼさず、英国拠点の欧州特許弁理士が、そのような特許を取得するクライアントを代理する上でも妨げとはなりません。UPは、現在EPOによって審査と許諾を受けた欧州特許から派生するものとなるでしょう。

行動提案事項:特許

英国のEU離脱に対して早急に準備する必要はありません。現行の欧州特許システムは原則的に、英国がEUを離脱しても影響を受けません。大きな期待の集まるUPCは2018年に開始されると思われます。欧州特許の国内有効化を継続するか、移行期間中にUPCの管轄権から「適用除外」を選ぶか、または新しいUPに全面的に移行するかという決断は、英国のEU離脱後に用意される選択肢を考慮する必要があります。

  1. 补充保护证书(SPCs

SPCは、特定の医薬品または植物保護製品に関する特許保護期間について通常5年未満の延長を行う効力を有しています。SPCは国ごとに許諾されますが(例えば英国は英国特許庁からというように)、SPCのための法的根拠はEU規定によるものです9。英国のEU離脱後は、既存のSPCは上述のEU(離脱)法案の救済規定に基づいて有効であり続けると予想されています。

新しいSPCを許諾するためのシステムは、英国のEU離脱後に変更になる可能性があります。EU(離脱)法案が制定された場合、政府には、保持したEU法の、例えば欧州医薬品庁(EMA)などのEU機関に言及する部分を改正または修正する権限が与えられます。特に、英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)によるEMAとは独立した販売承認がSPCの付与の要件となるかどうかは不明です。さらに、欧州裁判所の未来の判決は英国の裁判所を拘束することがなくなるため、SPCに関する英国の判例はCJEUの判例とは次第に異なるものになる可能性があります。

行動提案事項:SPC

即座に行動を起こす必要はありません。ただし、英国のEU離脱が近づいてきたらこの分野の展開を注視しておくことが重要です。

  1. 商标

商標は現在のところ、英国国内のみで保護を受けられる国内ルートによって、またはEUの全加盟国で保護を受けられる単一の権利である欧州連合商標(EUTM)10を出願することによって、またはマドリッド協定議定書の国際商標システムを通じて英国特許庁または欧州連合知的財産庁を指定することによって、登録することが可能です。

EU離脱後の英国におけるEUTM保護

英国がEUを離脱すれば、新しいEUTMは英国には適用されなくなることが予想されます。その商業的な重要性の高さを考えると、英国が既存のEUTMにおける英国の権利部分を認定するため、または英国の登録にこれを変更するための経過規定を発効する可能性は高いと思われます。上述のEU(離脱)法案の救済規定は、英国におけるEU商標法を保持するでしょうが、例えばEUIPOの役割に関して、おそらく大幅な変更を必要とするでしょう。英国における既存のEUTMのEU離脱後の認定が自動的に行われるか、それともEUTM権者による料金支払いなど積極的な措置が必要となるかはまだ不明です。

既存のEUTM内での英国の国内登録からの優先順位の主張についても何らかの措置を取らねばなりません。変更や認定の手続の際に、有効な優先順位の主張も確認して、これらを何らかの形で英国の国内登録として再確立することが予想されます。

EUTM権者が、英国での登録要件である、その商標が英国で使用されていること(または英国で誠意をもって使用する意図があること)を今後も示す必要があるか否かについては不明です11。逆に言えば、現在英国内のみで使用されているEUTMは、将来EUで不使用による取消の危険性があるということは覚えておかねばなりません 12

英国とEUは両方とも、国際商標登録のためのマドリッド協定議定書の締約当事者です。ですから、マドリッドシステムがEU離脱後にも英国とEUの商標登録のために利用可能であり続けることが予想されます。

権利行使

英国のEU離脱後は、EUTMの範囲に英国が含まれなくなるため、EUの裁判所に提起される権利行使とその結果出される差止命令は英国内で効力を持たなくなります。EUおよび英国で侵害が発生した場合、個別の権利行使が必要となるでしょう。さらに、英国を拠点とする企業がEU内で侵害を訴えられた場合、自国の管轄地ではなくEU加盟国の裁判所で訴訟を受けることになります。

英国のEU離脱後は、EU加盟国の裁判所からの法的問題についての新たな照会も含め、CJEUの新たな決定はほぼ確実に英国に適用されなくなるでしょう。したがって、現在英国商標法および欧州連合商標法は調和されていますが、時間の経過と共に徐々に相違が生じてくるかもしれません。

権利の消尽

現在、EU法は商標権者の同意のあるEEA内の一次販売に対して権利の消尽の原則を適用しています13。英国のEU離脱後に英国が権利の消尽を英国のみに適用するのか、EEAと英国にするのか、または国際的に(すなわち、全世界のどこでも)適用するのかはわかりません。国際消尽にすると、世界のどこか別の場所で合法的に販売された正規品の英国内における並行輸入や再販を商標権者が防ぐことが一層困難になるでしょう。英国のみの消尽を適用した場合は逆に、英国の商標権者は英国内で再販するためのEUからの平行輸入を防ぐことができるようになります。

代理

EEA域外の企業や個人は、EUIPOにおいて代理人を立てる必要があります14。英国のEU離脱後は、英国・EU間の離脱同意の一部として新たな取り決めがなされなければ、英国企業も代理人を立てる必要が生じます。

EUIPOにおける代理人(すなわち欧州商標弁理士)は、EEAにおける国籍、認可場所、事業拠点の3つの要件を満たさなければなりません15。現段階では、EUIPOにおける代理人の要件が英国のEU離脱後に英国を拠点とする代理人を保持するために調整されるかは不明です。いずれにせよ、ミューバン エリスはドイツのミュンヘンに創設する新しい事務所で、EUIPOでのすべての領域のサービスを提供し続けます。

英国の商標は影響を受けず

英国のEU離脱の結果、英国内での国内商標の登録と執行についての体制がただちに変わるとは思えません。とはいうものの、時間が経つにつれて英国商標法が欧州連合商標法と異なってくる可能性はあります。商標に関連する留保EU法は英国のEU離脱後の改正されるかもしれず、英国の裁判所はCJEUの将来の規定に従って英国の商標法を解釈する義務を負わなくなります。

行動提案事項:商標

現時点では、現行の実務を継続することが最良の行動方針だと考えています。ただ、重要な商標に関しては、さらに念を入れるために英国の国内出願について考えた方がいいかもしれません。英国がEUを離脱する前に、英国内でEUTMについての認定または変更のシステムについてもっとはっきりした指針が打ち出されるのを期待しています。

  1. 外观设计

意匠は、国内(英国)レベルとEUレベルの両方で、登録・未登録とも意匠権によって保護されています。

英国登録意匠

英国登録意匠は、英国のEU離脱によって直接影響を受けませんが、既存の英国の法律に何らかの変更があることは考えられます。このような変更の1つは、新規性と「欧州経済地域において事業を営んでおり、それに関連している分野の熟練者にとって、通常の営業過程において、基準日前に合理的には知られる可能性がなかった」開示に対する保護条項に関連したものです16。この保護条項は、英国がEUとEEAの両方から脱退した場合には、少なくとも英国を含むように改正されると思われます。または、英国のみに言及したものに改正されることもあり得ます。

未登録の意匠権(UDR)

英国のUDRは、表面装飾のような特定の例外を除いて、物品の全部または一部の意匠を保護します。英国のUDRは、英国の意匠創作者に対し相互保護を与えるEU加盟国または特定の非EU加盟国の国民もしくは居住者である「有資格者」によって物品が特定の意匠に創作された時点または「意匠文書」が作成されることによって自動的に成立します17。英国のEU離脱後は、EUが相互保護を与えないという根拠に基づいて、英国はUDRの範囲からEU国民と居住者を削除するかもしれません。EUの同等の規則である未登録共同体意匠(UCD)は、多くの重要な点において英国のUDRとは異なっているからです。

登録共同体意匠(RCD)

RCDは、EUの単一効権利です。そのためEUTMのように、既存のおよび新しいRCDはEU離脱後の英国には適用されないと予想されます。その商業上の重要性に鑑みて、英国がRCDの英国の権利部分に関して認定する経過規定を発効することは十分考えられます。これは自動的に行われるか、RCD権者が自発的に何らかの手段を講じることが必要となるかもしれません。

国際意匠保護に関するハーグ協定の適用に関しては、多くの疑問が発生しています。現在のところ、EUは締約当時者ですが英国はそうではありません。英国政府はハーグ協定に参加する意思を表明しており、2018年3月31日までには発効すると予想されます18。EU離脱後の英国でのEUを指定した国際意匠の有効性に関しては、英国がハーグ協定の締約国になってからも不透明です。というのは、英国は自身の権利で新たな参加国として参加するからです。RCDに関しては、英国はEUを指定する国際意匠を英国内で承認する経過規定を発効すると予想されます。

英国のEU離脱後、EUの裁判所に提起されるRCDの権利行使およびその結果出される禁止命令は英国内で効力を持たなくなります。EUおよび英国で侵害が発生した場合、個別の権利行使が必要となるでしょう。さらに、英国に拠点を置く企業がEU内で侵害を訴えられた場合、自国の管轄地ではなくEUの加盟国の裁判所で訴訟を受けることになります。

EUTMのように、英国意匠法についてのCJEUの判例の将来的な影響は少なくなり、徐々に異なるものになっていくと予想されます。

現在、EU法はRCD権者の同意のあるEEA内の一次販売に対して権利の消尽の原則を適用しています19。英国がEUとEEAの両方から離脱する場合、英国で一次販売を行ってもRCDの消尽とはならず、これによってRCD権者は英国からEEA域内への並行輸入を防ぐことができるようになります。最初に他の場所で販売された物品の英国内での再販が影響を受けるか否かについては、EU離脱後に英国が採用する消尽体制(すなわち国際的消尽か、EEAと英国か、または英国のみとするか)によって異なります。

EUIPOにおける代理

EU域外の企業および個人は、EUIPOにおいて代理人を立てる必要があります20。英国のEU離脱後は、英国企業も代理人を立てる必要が生じるでしょう。

意匠案件のEUIPOでの専門的代理人は、EUにおける国籍、認可場所、事業拠点の3つの要件を満たさなければなりません21(EEAとの連携が十分である場合の商標代理人規則を参照)。ただし、EUIPOおいて行動する権限のある欧州商標弁理士も、意匠案件についてクライアントを代理する権限を有します22。いずれにせよ、ミューバン エリスはドイツのミュンヘンに創設する新しい事務所で、EUIPOに関するすべての領域のサービスを提供し続けます。

未登録共同体意匠(UCD)

UCDによってその権利者は、欧州連合全体にわたって権限のない意匠の複製を防ぐ権利を与えられます。UCDは、意匠が欧州共同体(現在はEU)内で最初に公的に利用可能になった時に自動的に成立します。

UCDは、EU離脱後の英国には適用されなくなります。意匠が最初にEUで利用可能になってから3年間という比較的短い期間を考えると23、既存のUCDを英国で承認する経過規定が必ずしも発効されるかどうか、またこれがどう作用するかについては明確ではありません。将来的に、英国におけるUCD保護の喪失は、例えば服飾産業のような特定の部門には打撃を与えるかもしれません。上記の通り、英国のUDRはUCDの喪失を補うような相互的な保護を与えていません(例えば、英国のUDRは表面装飾を除外しています)。英国を拠点とする意匠創作者は、英国での意匠登録の利用を増やすために、意匠出願戦略を再考してもいいかもしれません。

行動提案事項:意匠

すぐに何らかの変化が起きるとは思えませんが、登録および/または未登録のEU意匠権を利用している企業は、英国のEU離脱までに追加保証として英国での登録を考えてもいいかもしれません。

  1. 植物品种权

特殊性、均一性、安定性を持つ新しい植物品種は、EUのすべての加盟国に適用される単一効権利である共同体植物品種権によってEUレベルで24、または植物育成権(PBR)によって英国の国内レベルで 25保護することができます。

英国のEU離脱は、英国のPBRには何ら影響しないと予想されます。しかし英国がEUを離脱したら、共同体植物品種権は英国に適用されなくなります。上述の他のEUの単一効権利と同様に、現行の共同体植物品種権を英国で認定するか、またはこれを英国のPBRに変更するための経過規定が発効されると予想され、おそらくこれには権利者の何らかの行為または料金の支払いが必要となるでしょう。

EU内に居住せず、事業所を持たない共同体植物品種権の申請者は、EUを拠点とする「手続代理人」を指名しなければなりません26。英国がEUを離脱した後、EU外に拠点を置く植物育成者はEUに拠点を置く代理人を指名する必要が生じるでしょう。ミューバン エリスでは、ミュンヘンの新事務所でこの分野について引き続きサービスを行う予定です。

  1. 地理标志保护(PGIs

特定地域で生産されたか、明確な特徴を持つ農産物および食料に関しては、EU規則27に基づいて原産地呼称保護(PDO)、地理的表示保護(PGI)、伝統特産品保証(TSG)の形で特別な法的保護が適用されています。有名な例としては、パルマ産の生ハム、ウェールズ産の子羊肉、フェタチーズなどがあります。

これらはEU規則に基づいて制定された単一効権利です。上述の他のEUの単一効権利と同様、既存のPDO、PGI、TSGを英国で承認するための経過規定が発効されるか、国内の権利に変更されることが考えられます。EU離脱後に英国が国内のPGIシステムを発効させる可能性もありますが確実ではありません。このような英国のシステムが既存のEUのシステムとどの程度類似しているのか定かではありませんが、EUと英国で保護された名称を相互に認識できるのに十分な程度には類似していることが望まれます28

  1. 版权及数据库权

英国の著作権は第一に1988年の著作権・意匠・特許法に基づいています。EUの単一効の著作権はありません。しかし、情報社会指令、ソフトウェア指令、孤児著作物指令、追求権など、EU域内を通じて著作権法を調和させるための様々なEU指令や法規が存在しています。このようなEUの法律の中には、CDPAを通じて、また個別の行政命令によって英国に導入されているものがあります。

EU域内での著作権の調和は完璧とは程遠いもので、それぞれの加盟国の間で著作権法や、著作権法の調和した部分の適用において相当な違いがあります。とはいうものの、EU指令は、とりわけベルヌ条約、ローマ条約、世界貿易機関のTRIPS29協定に基づく、英国も含めた加盟国の国際的義務を反映したものとなっています。そのため、EU離脱後も、英国がすでに導入されているEU指令を守るか、またはEU著作権の枠組みに合致する経過規定を導入するものと予測されます。EUおよびその統一市場の外では、英国は国際条約の義務があるためEUの著作権の枠組みと引き続き密接に連動すると思われますが、時間が経つにつれて司法上の相違が発生するのは避けられないでしょう。

英国のデータベース権は、EUのデータベース指令30から特別に派生したものです。実際、「独自の」データベース権は、EEA域内と(理論上は)相互保護を与えている国々のみで利用できる特有のEU知的財産権です。より広いEEAの権利をEEA域外で享受したいと望むならば、英国はおそらく、EEAと相互に許諾できる自国「独自の」権利を導入する必要があるでしょう。ただしSPCとPGIに関しては、国内法におけるCJEUの法体系といった複雑な問題を処理する必要があります。

  1. 商业机密

秘密情報に関するイングランドのコモン・ローは、国内の商業秘密権を規定しています。この分野においては、幅広い詳細な判例があります。これはEUで調和が取れていない知的財産法の領域であり、つまりこれについてはEUの法律がないのです。しかし事態は変わってきています。欧州連合理事会は最近、商業秘密指令に関する欧州委員会の提案を承認しました。これは、商業秘密の不法な取得、使用および開示に対する一致した対策について規定しています。EU官報に掲載されれば、加盟国は2年以内にこの指令を国内法に取り入れることになります。
商業秘密指令は、多くの加盟国にとって歓迎すべきものではないことがわかっており、英国もそのひとつです。英国では全般的に、コモン・ローで守秘義務違反に対する必要な権利と救済手段が規定されているため、TRIPSに基づく英国の義務を果たすにはそれで十分だという意識があります。そのため、第50条による交渉期間が終了するまでは加盟国であっても、英国はEU離脱前にこの指令を導入するとは思えません。EU離脱後も同様に、英国はこの指令の国内版を導入しないと思われます。

 

1 2017EU(離脱通知)

2 白書: EUからの英国の離脱およびEPとの新たなパートナーシップ 201722(8)

3   EU(離脱)法案、第14

4 EU(離脱)法案、第4および5

5 UPC協定第89(1)

6 連邦憲法裁判所 異議申立 No. 2 BvR 739/17

7 おそらくUPC協定の第87(2)を使って第7(2)を改正

8 UPC協定第48

9 欧州理事会規則 EC 469/2009

10 以前の名称は共同体商標(CTM)

11 1994 英国商標法第32(3)

12 欧州理事会規則 EC 207/2009 51

13 欧州理事会規則EC 207/2009 13

14 欧州理事会規則 EC 207/2009 92(2)

15 欧州理事会規則 EC 207/2009 92(2)

16 1949年登録意匠法第1B(6)(a)

17 1988年著作権・意匠・特許法第217

18 英国知的財産大臣ジョー・ジョンソンによる2017330日付声明書

19 欧州理事会規則EC 6/2002 21

20 欧州理事会規則 EC 6/2002 77(2)

21 欧州理事会規則 EC 6/2002 78(4)(b)

22 欧州理事会規則 EC 6/2002 78(1)(b)

23 欧州理事会規則 EC 6/2002 第11条(1)

24 欧州理事会規則 EC 2100/94 第2条

25 1997年植物品種保護法 第1条

26 欧州理事会規則 EC 2100/94 第82 条

27 規則(EU) No 1151/2012

28 規則(EU) 1151/2012の前文第24条では、「与えられる保護は、対応する基準を満たし、かつ原産国で保護される第三国の原産地呼称および地理的表示にも同等に与えられるべきである」と述べられている。

29 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定 (Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)

30 指令96/9EC

This information is simplified and must not be taken as a definitive statement of the law or practice.  Please refer to our English-language website for more information.