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英国のEU脱退(「英国のEU離脱」)が知的財産権に及ぼす影響

英国のEU脱退(「英国のEU離脱」)が知的財産権に及ぼす影響

2016年6月23日、英国(UK)は欧州連合(EU)の一員として残留するか否かについての国民投票を行いました。この国民投票の結果は、52%対48%で英国はEUから脱退すべきであるとの見解(英国の脱退、すなわち「Brexit(英国のEU離脱)」を支持する見解)となりました。

しかし、ただちに影響が出ることはありません。実際のところ、EU脱退の正式な手続きもまだ始まってはいません。国民投票自体に法的効力はなく、単なる諮問的国民投票です。英国政府が国民投票の結果を具体化する決意を固めた場合、脱退のための法的手順はリスボン条約の第50条に従わなければなりません。これによれば、英国は手続き開始のために欧州理事会に正式に通知する必要がありますが、この手続きは早くても2016年9月まで着手されないだろうと予測されています。正式な通知が行われると、第50条の規定では英国とEUとの間の将来の関係も考慮した上で両者が交渉し、脱退協定を締結するまでに2年間の猶予が与えられています。協定が結ばれず、全員一致を必要とする延長もなされない場合は、EUの加盟国としての英国の資格は2年間が経過した時点で停止します。

このように不確定要素が多く、特に手続きがいつ開始されるか正確にわからないということを考えると、英国のEUからの離脱がいつ正式に決まるのかはまったくわかりません。交渉が複雑であるため、2年未満で離脱するようなことはなさそうです。

離脱が正式に発効するまでは、英国はEUの正式な加盟国として存続します。中でも、現行の欧州知的財産権は第50条の交渉期間中であっても影響を受けずに存続します。

英国とEUとの間の将来の法的関係がどのような性質のものになるのかもまだわかっていません。特に知的財産問題と関連が深いのは、英国が欧州自由貿易地域に参加することによって、欧州経済領域(EEA)、いわゆる「単一市場」の加盟国として残留するのかどうかという点です。英国の一部の地域、例えばスコットランドなどがEUに残るか、または英国から分離して個別にEUに加盟するかどうかという考察については、この記事では触れていません。

英国のEUからの離脱の影響は、様々な知的財産権によって異なります。下記で、1) 特許、2) 補完的保護証明(SPC)、3) 商標、4) 意匠、5) 植物品種保護権(PVR)、6) 地理的表示保護(PGI)、7)著作権およびデータベース権、8) 商業秘密に関する実際の影響について考察しました。

お客様、同僚、そして友人たちにご安心頂きたいのですが、ミューバン・エリスが提供する欧州の知的財産に関するサービスが阻害されることはありません。私たちはドイツのミュンヘンにミューバン・エリスの事務所を新たに開くことを予定しています。英国政府と残りのEU加盟国との間の交渉が完結する前に、この事務所が開設されることになるでしょう。このことで、特に私たちが欧州の商標と意匠に関するサービスを全面的に提供し続けていくことが保証されるでしょう。欧州特許庁とドイツ特許庁に近い場所にあることに加え、この新事務所は、新たにできる統一特許裁判所の中央部のミュンヘン支部にも近い位置になります。

1.  特許

欧州の特許は影響を受けず

英国での特許は、欧州特許庁(EPO)を介して国内ルートと欧州ルートのいずれかで取得できます。どちらも、英国がEUを離脱しても影響を受けません。また特許協力条約(PCT)にも影響はありません。PCTによる国際特許出願は、国内ルートとEPOルートを介して引き続き英国を指定することができます。英国は欧州特許機構の一員として存続し、欧州特許条約(EPC)は英国のEU離脱後も引き続き英国に適用されます。EPOはEUの機関ではなく、現在もEUに入っていない加盟国が10か国あります。

EPOから許諾された欧州特許は、英国でも有効であり、今のところ英国の裁判所でも執行力を有します。EEA域内で特許権者の同意を得た一次販売による消尽を統制する規則は、英国がEUを離脱した後に変更される可能性があります。

EPOにおける代理も影響を受けず

英国を拠点とする欧州特許弁理士によるEPOでのクライアントの代理も、英国のEU離脱によって影響を受けません。ミューバン・エリスでは、1977年のEPO創設以来、EPOと協力関係を築いており、欧州における特許の法と実務の発展と適用に直接かかわってきました。多くの欧州特許弁理士から成る当事務所のグループは、この経験に基づいてこれからもお客様と協力し、PCTに基づく欧州特許出願と国際特許出願を利用してその発明を保護していきます。

単一効特許および統一特許裁判所

一般に単一効特許(UP)として知られ、単一の効力を有する欧州特許と、これに関連する統一特許裁判所(UPC)は、まだ稼働していません。UP規則とUPC協定はEUの発展的協力手続きに基づいており、UPとUPCは、EUの加盟国のみが利用できます[1]。従って、英国はEU脱退後はこれに参加できなくなるでしょう。

これを書いている時点では英国の国民投票の結果を念頭に置いてはいますが、UPCとUPの実施のための実務上の準備は進んでおり、2017年のUPCの業務開始を目標にしています。

UPC協定については、英国は必須批准国3か国のうちの1つです(他2か国はフランスとドイツ)[2]。英国はまだ批准を完了していません。EU離脱に対する英国の決断によってUPとUPCの導入は遅れるとみられますが、必ずしも妨げられるとは限りません。基本的には3つの選択肢があります。

第一の選択肢としては、現在もなおEUの加盟国である英国はこのシステムを発効させるようUPC協定を批准することができます。その後、EUからの離脱と同時にUPCから離脱するのです。おそらく、第一審裁判所の中央部のロンドン支部は、EU加盟国の域内に移設されると思われます。UPCへの必要な変更は、英国とEUとの間の最終的な「英国のEU離脱に関する条約」[3]への参照によって実施されることになるでしょう。この「参加後に離脱」という筋書きに従えば、UPCは理論上、2017年に業務を開始できます。下記のEUTMでは、英国がEUから離脱する際に有効となる経過規定によって、英国を含むすべてのUPは、英国の国内特許として承認されるかそのように変更されるとみられています。

第二の選択肢は、英国がUPC協定を批准しないというものです。この場合、UPCは英国の批准を要件から外すべく改定されるか、または他の加盟国が英国のEU離脱を待ち、その時点でイタリアが第3の必須批准国として自動的に英国の代わりとなる可能性があります。こうすれば、かなりの遅れが生じはしますが、英国なしでUPとUPCが効力を持つことができます。

第三の選択肢として提案されているのは、英国がUPC協定を批准してシステムが有効となるようにし、その後英国とEUとの最終的な「英国のEU離脱に関する条約」によって、英国がUPとUPCシステムの対象として存続できるようにするというものです。この選択肢にはまだ実務上の問題がいくつかありますが、最終的な成果を得るための政治的な意志があれば、これを乗り越えることができるでしょう。

上記で述べた第一と第二の選択肢に従えば、英国のEU離脱によってUPが適用される市場規模は縮小されてしまうでしょう。しかし、英国の参与がないとしても、欧州内における複数の管轄地での特許訴訟にかかる費用が軽減されるという点で、UPとUPCは歓迎すべき進歩であり、そのような訴訟を英語で行うことも許可されます。

英国市場の適用範囲が抜けることを考慮して、UPの更新費用またはUPCの裁判費用が調整されるかどうかはもう少し様子を見なければなりません。現在提案されているUPの更新料は「上位4か国」の分析を基にしており、英国の参加も勘定に入っています。英国を含め、4か国以下の国で欧州特許を有効化しようとする企業にとっては、現在進められているUPの更新料はあまり魅力的には映らないかもしれません(選択した国がロンドン合意の締結国であった場合、考えうる翻訳費用の削減はごくわずかとなります)。

[1] UPC協定 第84条 | [2] UPC協定 第89(1)条 | [3] おそらくUPC協定の第87(2) 条を使って第7(2) 条を改定

UPCにおける代理

UPCにおけるクライアントの代理手続きは、UPCの締結国の裁判所において実務を行う権限のある弁護士と、適切な訴訟の資格を有している欧州特許弁理士に限られています[4]。英国がEUから離脱した後も、ここには英国を拠点とする欧州特許弁理士が含まれます。ミューバン・エリスは、UPCが業務を開始した場合、全面的に関与したいと思っています。

英国のEU離脱は、英国拠点の企業がUPを取得する上では何の影響も及ぼさず、英国拠点の欧州特許弁理士が、そのような特許を取得するクライアントを代理する上でも妨げとはなりません。UPは、現在EPOによって審査と許諾を受けた欧州特許から派生するものとなるでしょう。

[4] UPC協定 第48条

行動提案事項:特許
英国のEU離脱に対して早急に準備する必要はありません。現行の欧州特許システムは原則的に、英国がEUを離脱しても影響を受けません。大きな期待の集まるUPCには遅れが生じる見込みで、長期的には英国は参与しないと思われます。欧州特許の国内有効化を継続するか、移行措置期間中にUPCの管轄権から「適用除外」を選ぶか、または新しいUPに全面的に移行するかという決断を、英国のEU離脱に照らして再考する必要があるかもしれません。

2.  補完的保護証明(SPC)

SPCは、特定の医薬品または植物保護製品に関する特許保護期間について通常5年未満の延長を行う効力を有しています。SPCは国ごとに許諾されますが(例えば英国は英国特許庁からというように)、SPCのための法的根拠はEU規定によるものです[5]。英国のEU離脱後は、SPCに関する現在の法的根拠は英国には適用されなくなるでしょう。その商業上の重要性に鑑みて、英国は既存のSPCを承認するような法的な仕組みを導入すると思われます。

新しいSPCを許諾するために英国が新たな国内法規を発効するかどうかはさらに不確かなものです。EUの一員ではないがEEA加盟国であるノルウェーが、EUのSPC法規と密接に連動したSPC体制を有していることは何らかの参考になるかもしれません。EU離脱後の英国政府は原則的にEUと類似のSPC法規を発行するかもしれませんが、時が経つにつれ、SPCに関する英国の判例法は欧州共同体司法裁判所(CJEU)のそれとは異なるものになる可能性もあります。

[5] 欧州理事会規則 EC 469/2009

行動提案事項:SPC
即座に行動を起こす必要はありません。ただし、英国のEU離脱が近づいてきたらこの分野の展開を注視しておくことが重要です。

3.  商標

商標は現在のところ、国内ルートによって英国国内のみで保護を受けられる登録を行うか、またはEUの全加盟国で保護を受けられる単一の権利である欧州連合商標(EUTM)[6]を出願するか、またはマドリッド協定議定書の国際商標システムを通じて英国またはEUの特許庁に登録することが可能です。

[6]以前の名称は共同体商標(CTM)

EU離脱後の英国におけるEUTM保護

英国がEUを離脱すれば、新しいEUTMは英国には適用されなくなることが予想されます。その商業的な重要性の高さを考えると、英国が現行のEUTMにおける自国の権利部分を認めるため、または英国の登録にこれを変更するための経過規定を発効する可能性は高いと思われます。これが自動的に行われるか、それともEUTMの所有者による料金支払いなど積極的な措置が必要となるかはまだ不明です。

既存のEUTM内での英国の国内登録による優先権の主張についても何らかの措置を取らねばなりません。変更や承認の手続きの際に、有効な優先権の主張も確認して、これを何らかの形で英国の国内登録として再設定し直すことが期待されています。

EUTMの所有者が、その商標が英国での登録のために求められている通り、英国で使用されていること(または英国で誠意をもって使用する意図があること)を今後も示す必要があるか否かについてはわかっていません[7]。逆に言えば、現在英国内のみで使用されているEUTMは、しかるべき時がきたらEUで使用できなくなるよう停止される危険性があるということは覚えておかねばなりません[8]

英国とEUは両方とも、国際商標登録のためのマドリッド議定書の締約当事者です。ですから、マドリッドのシステムがEU離脱後にも英国とEUの商標登録について有効であり続けることが予測されます。

[7] 1994年 英国商標法 第32(3)条 | [8] 欧州理事会規則 EC 207/2009 第51条

強制措置

英国のEU離脱後は、EUTMの範囲に英国が含まれなくなるため、EUの裁判所で行われる強制措置とその結果である差止命令は英国内で効力を持たなくなります。EU内と英国で侵害が発生した場合、個別の強制措置が必要となります。さらに、英国を拠点とする企業がEU内で侵害を訴えられた場合、自国の管轄地ではなく、EU加盟国の裁判所で訴訟を受けることになります。

英国のEU離脱後は、EU加盟国の裁判所からの法的問題についての照会も含め、CJEUの裁定はほぼ確実に英国に適用されなくなるでしょう。従って、今のところEUと英国の商標についての法律は連動していますが、時間の経過と共に徐々に相違が生じてくるかもしれません。

権利の消尽

現在、EUの法は商標所有者の同意のあるEEA内の一次販売に対して権利の消尽の原則を適用しています[9]。英国のEU離脱後に英国が権利の消尽を英国のみに適用するのか、EEAと英国にするのか、または国際的に(すなわち、全世界のどこでも)適用するのかはわかりません。国際的な消尽にすると、世界のどこか別の場所で合法的に販売された正規品の英国内における並行輸入や再販を商標所有者が防ぐことが一層困難になるでしょう。英国のみの消尽を適用した場合は逆に、英国の商標所有者は英国内で再販するためのEUからの平行輸入を防ぐことができるようになります。

[9] 欧州理事会規則EC 207/2009 第13条

代理

EEA域外の企業や人は、EUIPOにおいて代理人を立てる必要があります[10]。英国のEU離脱後は、英国がEEAの加盟国として存続しなければ、英国企業も代理人を立てる必要が生じます。

EUIPOにおける代理人(すなわち欧州商標弁理士)は、EEAにおける国籍、認可場所、事業拠点の3つの要件を満たさなければなりません[11]英国がEEAの加盟国として存続するか否かにかかわらずミューバン・エリスはドイツのミュンヘンに創設する新しい事務所で、EUIPOでのすべての領域のサービスを提供し続けます。

[10] 欧州理事会規則 EC 207/2009 第92(2)条 | [11] 欧州理事会規則EC 207/2009 第93(2)条

英国の商標は影響を受けず

英国のEU離脱の結果、英国内での国内商標の登録と執行についての体制がただちに変わるとは思えません。そうは言っても、時間が経つにつれて英国の商標に関する法がEUのそれと異なってくる可能性はあります。関連のEU指令は英国に適用されなくなり、おそらくEU離脱後の法的な自由化が進み、英国の裁判所はCJEUの規定に従って英国の商標法を解釈する義務を負わなくなります。

行動提案事項:商標
現時点では、現行の実務を継続することが最良の行動方針だと考えています。ただ、重要な商標に関しては、さらに念を入れるために英国の国内出願について考えた方がいいかもしれません。英国がEUを離脱する前に、英国内でEUTMについての承認または変更のシステムについてもっとはっきりした指針が打ち出されるのを期待しています。

4.  意匠

意匠は、国内(英国)レベルとEUレベルの両方で、登録・未登録とも意匠権によって保護されています。

英国で登録された意匠

英国で登録された意匠は、英国のEU離脱によって直接影響を受けませんが、現行の英国の法に何らかの変更があることは考えられます。このような変更の1つは、新規性と「通常の業務において、EEA内で業務を行い、かつ関連する部門に特化した人に対して合理的に知られるはずがなかった」開示に対する保護条項に関連したものです[12]。この保護条項は、英国がEUとEEAの両方から脱退した場合には、少なくとも英国を含むように改定されると思われます。または、英国のみに言及したものに改訂されることもあり得ます。

[12] 1949年 登録意匠法 第1B(6)(a)項

未登録の意匠権(UDR)

英国のUDRは、表面装飾のような特定の例外を除いて、物品の全部または一部の意匠を保護しています。英国のUDRは、英国の意匠考案者に対し相互保護を与えるEU加盟国の国民もしくは居住者か、特定の非EU加盟国の「有資格者」によって特定の設計に関する物品が作成された時点、または「設計文書」が作成されることによって自動的に成立します[13]。  英国のEU離脱後は、EUが相互保護を与えないという根拠に基づいて、英国はUDRの範囲からEU国民と居住者を削除するかもしれません。EUの同等の規則である未登録共同体意匠(UCD)は、多くの重要な点において英国のUDRとは異なっているからです。

[13] 1988年 著作権・意匠・特許法 第217項

登録共同体意匠(RCD)

RCDは、EUの単一効権利です。そのためEUTMでは、既存の、そして新しいRCDはEU離脱後の英国には適用されないと考えられます。その商業上の重要性に鑑みて、英国がRCDの英国の権利部分に関して承認する経過規定を発効することは十分考えられます。これは自動的に行われるか、RCD所有者が自発的に何らかの手段を講じることが必要となるかもしれません。

国際意匠保護に関するハーグ協定の適用に関しては、多くの疑問が発生しています。現在のところ、EUは締約当時者ですが英国はそうではありません。英国はすでにハーグ協定に参加する計画を立てており[14]、2016年の終わりには受け入れがなされる模様です。EU離脱後の英国でEUを指定した国際意匠の有効性に関しては、たとえ英国がハーグ協定の締約国になったとしても不透明です。というのは、英国は自身の権利で新たな参加国として参加するからです。RCDに関しては、英国はEUを指定する国際意匠を英国内で承認する経過規定を発効すると思われます。

英国のEU離脱後、EUの裁判所で行われるRCDの強制措置およびその結果としての禁止命令は、英国では効力を持たなくなります。  EUおよび英国で侵害が発生した場合、個別の強制措置が必要となるでしょう。また、英国に拠点を置く企業がEUで侵害を訴えられた場合、自国の管轄地ではなくEUの加盟国の裁判所で訴訟を求められることになります。

EUTMに関しては、英国の意匠法についてのCJEUの判例法の影響は少なくなり、徐々に異なるものになっていくと思われます。

現在、EUの法はRCD所有者の同意のあるEEA内の一次販売に対して権利の消尽の原則を適用しています[15]。英国がEUとEEAの両方から脱退した場合、英国で一次販売を行ってもRCDの消尽とはならず、これによってRCD所有者は英国からEEA域内への並行輸入を防ぐことができるようになります。最初に他の場所で販売された物品の英国内での再販が影響を受けるか否かについては、EU離脱後に英国が採用する消尽体制(すなわち国際的消尽か、EEAと英国か、または英国のみとするか)によって異なります。

[14] https://www.gov.uk/government/consultations/uk-accession-to-the-hague-agreement | [15] 欧州理事会規則EC 6/2002 第21条

EUIPOにおける代理

EU域外の企業および人は、EUIPOで代理を立てる必要があります[16]。英国のEU離脱後は、英国がEEAの加盟国として存続するか否かにかかわらず、英国企業も代理人を立てる必要が生じます。

意匠問題に関するEUIPOでの専門的代理人は、EUにおける国籍、認可場所、事業拠点の3つの要件を満たさなければなりません[17](EEAとの連携が十分である場合の商標代理人規則を参照)。ただし、EUIPOおいて行為する権限のある欧州商標弁理士も、意匠問題について顧客を代理する権限を有します[18]英国がEEAの加盟国として存続するか否かにかかわらずミューバン・エリスはドイツのミュンヘンに創設する新しい事務所で、EUIPOに関するすべての領域のサービスを提供し続けます。

[16] 欧州理事会規則 EC 6/2002 第77(2)条 | [17]  欧州理事会規則 EC 6/2002 第78(4)(b)条 | [18]  欧州理事会規則 EC 6/2002 第78(1)(b)条

未登録共同体意匠(UCD)

UCDによってその所有者は、欧州連合全体にわたって権限のない意匠の複製を防ぐ権利を与えられます。UCDは、意匠が欧州共同体(現在はEU(欧州連合))内で最初に公的に使用された時に自動的に成立します。

UCDは、EU離脱後の英国には適用されなくなります。意匠が最初にEUで使用されてから3年間という比較的短い期間を考えると[19]、既存のUCDを英国で承認する経過規定が必ずしも発効されるかどうか、またこれがどう作用するかについては明確ではありません。将来的に、英国におけるUCD保護の喪失は、例えば服飾産業のような特定の部門には打撃を与えるかもしれません。上記の通り、英国のUDRはUCDの喪失を補うような相互的な保護を与えていません(例えば、英国のUDRは表面装飾を除外しています)。英国を拠点とする意匠考案者は、英国での意匠登録の利用をよりよくするために、意匠出願の方法を再考しようとする可能性があります。

[19] 欧州理事会規則 EC 6/2002 第11(1)条

行動提案事項:意匠
すぐに何らかの変化が起きるとは思えませんが、登録または未登録のEU意匠権を利用している企業は、英国のEU離脱までに追加保証として英国での登録を考えてもいいかもしれません。

5.  植物品種保護権

特殊性、均一性、安定性を持つ新しい植物品種は、EUのすべての加盟国に適用される単一効権利である共同体植物品種権によってEUレベルで[20]、または植物育成権(PBR)によって英国の国内レベルで[21]保護できます。

英国のEU離脱は、英国のPBRには何ら影響しないとみられます。しかし英国がEUを離脱したら、共同体植物品種権は英国に適用されなくなります。上記で述べた他のEUの単一効権利と同様に、現行の共同体植物品種権を英国で承認するか、またはこれを英国のPBRに変更するための経過規定が発効されると思われ、おそらくこれには権利保有者の何らかの行為または料金の支払いが必要となるでしょう。

EU内に居住せず、事業所を持たない共同体植物品種権の申請者は、EUを拠点とする「手続き代理人」を指名しなければなりません[22]。英国がEUを離脱した後、EU外に拠点を置く植物育成者はEUに拠点を置く代理人を指名する必要が生じるでしょう。ミューバン・エリスでは、ミュンヘンの新事務所でこの分野について引き続きサービスを行う予定です。

[20] 欧州理事会規則 EC 2100/94 第2条 | [21] 1997年 植物品種保護法 第1項 | [22] 欧州理事会規則 EC 2100/94 第82条

6.  地理的表示保護(PGI)

特定地域で生産されたか、明確な特徴を持つ農産物および食料に関しては、EU規則[23] に基づいて原産地呼称保護(PDO)、地理的表示保護(PGI)、伝統特産品保証(TSG)の形で特別な法的保護が適用されています。有名な例としては、パルマ産の生ハム、ウェールズ産の子羊肉、フェタチーズなどがあります。

これはEU規則に基づいて制定された単一効権利なので、EU離脱後の英国には適用されなくなります。上記で述べた他のEUの単一効権利と同様、既存のPDO、PGI、TSGを英国で承認するための経過規定が発効されるか、国内の権利に変更されることが考えられます。EU離脱後に英国が国内のPGIシステムを発効させる可能性もありますが確実ではありません。このような英国のシステムが既存のEUのシステムとどの程度類似しているのか定かではありませんが、EUと英国で保護された名称を相互に認識できるのに十分な程度には類似していることが望まれます[24]

[23] 規則(EU) No 1151/2012 | [24] 規則(EU)1151/2012の前文第24条では、「与えられる保護は、対応する基準を満たし、かつ原産国で保護される第三国の原産地呼称および地理的表示にも同等に与えられるべきである」と述べられている。

7.  著作権およびデータベース権

英国の著作権は第一に1988年の著作権・意匠・特許法に基づいています。EUの単一効の著作権はありません。しかし、情報社会指令、ソフトウェア指令、孤児著作物指令、追求権など、EU域内を通じて著作権法を調和させるための様々なEU指令や法規が存在しています。このようなEUの法の中には、CDPAを通じて、また個別の行政命令によって英国に導入されているものがあります。

EU域内での著作権の調和は完璧とは程遠いもので、それぞれの加盟国の間で著作権法や、著作権法の調和した部分の適用において相当な違いがあります。とは言うものの、EU指令は、とりわけベルヌ条約、ローマ条約、世界貿易機関のTRIPS[25]協定に基づく、英国も含めた加盟国の国際的義務を反映したものとなっています。そのため、EU離脱後も、英国がすでに導入されているEU指令を守るか、またはEU著作権の枠組みに合致する経過規定を導入するものと予測されます。英国がEUを離脱した後でEEAに加入すれば、CJEUの法体系に従うなど、連携した枠組みへの密接な関わり(少なくとも部分的には)が継続するでしょう。統一市場の外では、英国は国際条約の義務があるためEUの著作権の枠組みと引き続き密接に連動すると思われますが、時間が経つにつれて司法上の相違が発生するのは避けられないでしょう。

英国のデータベース権は、EUのデータベース指令[26]から特別に派生したものです。実際、「独自の」データベース権は、EEA域内と(理論上は)相互保護を与えている国々のみで利用できる特有のEU知的財産権です。より広いEEAの権利をEEA域外で享受したいと望むならば、英国はおそらく、EEAと相互に許諾できる自国「独自の」権利を導入する必要があるでしょう。ただしSPCとPGIに関しては、国内法におけるCJEUの法体系といった複雑な問題を処理する必要があります。

[25] 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights) | [26] EC指令96/9

8.  商業秘密

秘密情報に関するイングランドのコモン・ローは、国内の商業秘密権を規定しています。この分野においては、幅広い詳細な判例があります。これはEUで調和が取れていない知的財産法の領域であり、つまりこれについてはEUの法がないのです。しかし事態は変わってきています。 欧州連合理事会は最近、商業秘密指令に関する欧州委員会の提案を承認しました。これは、商業秘密の不法な取得、使用および開示に対する一致した対策について規定しています。EU官報に掲載されれば、加盟国は2年以内にこの指令を国内法に取り入れることになります。

商業秘密指令は、多くの加盟国にとって歓迎すべきものではないことがわかっており、英国もそのひとつです。英国では全般的に、コモン・ローで守秘義務違反に対する必要な権利と救済手段が規定されているため、TRIPsに基づく英国の義務を果たすにはそれで十分だという意識があります。そのため、第50条による交渉期間が終了するまでは加盟国であっても、英国はEU離脱前にこの指令を導入するとは思えません。EU離脱後も同様に、EEAの加盟国となった結果として必要にならない限り、英国はこの指令の国内版を導入しないと思われます。

要約すれば

私たちは、上記で述べたたくさんの不確定な部分が今後数カ月でもっと明確になるだろうと予測しており、適宜これを更新していく予定でいます。当面、詳細情報については通常のミューバン・エリスの連絡先、firstname.lastname@mewburn.com までご連絡ください。

This information is simplified and must not be taken as a definitive statement of the law or practice.  Please refer to our English-language website for more information.