登録共同体意匠 – 基礎編

知的財産において、製品の「意匠」とは一般にその形状や装飾を指しますが、正確な定義は保護の種類によって異なります。基本的に、製品の意匠は、その構造や操作の技術的原理ではなく、その外観に関するものです。

意匠を保護する方法はいくつかありますが、このウェブページでは、欧州連合(European Union (EU))における意匠登録の方法について説明します。意匠に関する私共のウェブページは他に3種類あります:

  • 英国登録意匠 (日本語ウェブページ)

  • ハーグ協定に基づく国際登録 (英語ウェブページ)

  • 登録しなくても自動的に意匠が保護される方法 (日本語ウェブページ)

登録共同体意匠とは?

登録共同体意匠は、「独占」権、すなわち、登録意匠を模倣したか否かにかかわらず、その意匠を他人が使用することを禁止する権利を付与するものです。

登録共同体意匠は、意匠権者に対し、その意匠が形状である場合にはその形状を具現化した製品を、装飾である場合にはその装飾を付した製品を、EU内で製造、使用、販売、輸出入する独占的な権利を付与します。これらの権利は、知識のあるユーザーに実質的に異なる印象を与えない類似の意匠にも及びます。

意匠権者は、意匠権者の許可なくEU内で意匠権を実施する第三者に対し権利行使をすることができ、たとえその第三者が独自に創作した意匠を複製することなく使用している場合であっても、権利行使することができます。

登録共同体意匠を取得するには?

登録共同体意匠を取得するには、スペインのアリカンテにある欧州連合知的財産庁(EUIPO、旧略称OHIM)に正式な意匠登録出願をする必要があります。

登録によって保護されるものは?

意匠は、製品の全体または一部(その内部を含む)の外観であり、製品の線、輪郭、色彩、形状、質感、材料または装飾から生じ得ます。製品は、コンピュータアイコンや活字書体などのグラフィックシンボルである場合もあります。

意匠登録出願にかかる意匠は、以下の2つの要件を満たさなければならなりません。


すなわち、意匠に
  •  新規性があること
  • 独自性があること

この2つの要件は、有効な出願日前に公衆に利用可能となった意匠を基準として判断されます。意匠は、公表、使用、その他の手段によって利用可能となります。

グレースピリオド(新規性喪失の例外)

上記要件の重要な例外として、出願日(該当する場合は優先日)前12ヶ月以内に創作者が行った先の公開または創作者が行った開示の結果生じた先の公開により、新規性また独自性が喪失することはありません。

しかし、このような公開は、個々の国、特に欧州連合域外での更なる意匠登録を妨げる可能性があります。なぜなら、世界の多くの国では、このようなグレースピリオドが認められていないか、より短い期間しか認められていないからです。

この規定は、グレースピリオド中に創作者の行為から独立して行われる公開を排除するものではないため、できる限り意匠が公開される前に意匠登録出願を行う必要があります。

セーフガード条項

上記要件に対するもう1つの例外は、関連事業部門において、欧州経済領域(European Economic Area (EEA))において有効な出願日前に知られなかった先の公開は無視されるというものです。この規定は、公開の範囲、場所、時間のいずれによるかを問わず、不明瞭な公開を除外するものであると考えられます。

新規性

意匠が新規であるには、先行意匠と比較して軽微な詳細以上に違いがある必要があります。

独自性

意匠に独自性があるためには、知識のあるユーザーに対して、先行の意匠とは異なる全体的な印象を与えなければならなりません。多くの場合、知識のあるユーザーは、製品のエンドユーザーであるとみられます。

創作者の創作の自由度が低い分野では、登録可能な意匠と先行意匠の差異は、創作者の創作の自由度が完全に高い場合ほど大きくはなりません。このことは、登録から発生する侵害権にも反映されます。

複合製品とスペアパーツ

複合製品とは、2つ以上の交換可能な構成部品で構成され、製品の分解と再組み立てが可能な製品を指します。このような製品の構成部品の意匠は、その構成部品が複合製品の通常の使用中に視認可能な場合にのみ登録されます。

さらに、構成部品を使用して元の外観に戻すように複合製品を修理することは、その構成部品の意匠について登録された意匠を侵害しません。これは、例えば自動車部品が登録されていたとしても、「非純正」の自動車部品の製造・販売を引き続き認めることを目的としています。

除外される特徴および意匠

意匠登録は、製品の技術的機能によってのみ決定される意匠の特徴や、製品を他の製品と接続することにより、他の製品の中または他の製品の周囲または他の製品に対して配置することにより、いずれかの製品がその機能を発揮できるようにするために必要な特徴を保護することはできません。

ただし、モジュール製品の組み立てを可能にする目的の意匠は登録することができます。

例えば、オリンピックのシンボル、王室の紋章、国旗などを含む保護されたエンブレムを組み込んだ意匠を登録することはできません。

存続期間

意匠権の存続期間は、登録後25年ですが、5年ごとに更新(手数料を納付)する必要があります。

外国での意匠登録

共同体意匠登録出願をすることにより、「優先権」が発生することから、同出願が最初の出願である場合、同出願を基礎として、同出願日から6ヶ月以内に外国で意匠登録出願することができます。

出願手続

私共は、代理人として、出願から意匠登録までの全ての手続を行うことができます。

出願

出願書類を作成するためには、意匠の全ての特徴を示す図面または写真が必要です。

また、見本や模型があれば、そこから図面や写真を作成することも可能です。提出することができる立体的形状の意匠の図面の数は7です。

また、以下の情報も必要となります:
  •  出願人(自然人・法人)の氏名、住所、国籍
  • 意匠に係る物品の説明または一般名称(これが明らかでない場合)
  •  優先権を主張する場合、先の出願の詳細


創作者について記載することも、創作者がその氏名が記載される権利を放棄した旨を記載することも可能ですが、義務ではありません。

出願に意匠の簡単な説明を含めることもできます。

出願時に登録料、出願公開料および/または出願公開延期料を支払う必要があります(下記参照)。

優先権を主張する場合、意匠登録出願から3ヶ月以内またはその後EUIPOが定める期間内に優先権書類の謄本を提出する必要があります。優先権書類を出願と同時に提出する方が費用対効果が高いです。EUIPOは紙の優先権書類のPDFスキャンを受け付けています。

公開の延期

登録共同体意匠は、通常、登録手続が完了すると公開されますが、出願日または優先日から最大30ヶ月間、公開を延期することができます。これにより、包袋と意匠は公開されませんが、通常の公開の代わりに、公開が延期された旨が記載されます。この延期には、意匠登録出願時の手数料の支払いと、意匠が公開される前の公開手数料の支払が必要です。したがって、この手数料を支払うことができるのは、出願日(または優先日)から30ヶ月が経過する3ヶ月前までとなります。

延期期間中は、登録が第三者に通知されない限り、第三者に対して登録を行使することはできません。

複数意匠登録出願

複数の意匠について、その意匠に係る物品が国際意匠分類の同一分類に含まれる限り、一群の意匠登録出願が可能です。グループ化する意匠に制限はありません。

このような複数意匠登録出願を行う利点は、単独の意匠登録出願に比べてコストが安いことです。

複数意匠登録出願における各意匠は、個別の意匠権となるため、個別にライセンス付与および譲渡することができます。

審査

意匠登録出願は、方式についてのみ審査されます。先行意匠の調査は行われません。

審査が終わると、意匠は登録され、公開されます(ただし、公開の繰り延べが認められます(上記参照))。方式的要件を具備すれば、出願から公開までは数週間程度です。

無効

意匠登録後は、無効審判を請求することができます。先行権に基づいて新規性欠如または独自性欠如を理由として審判請求する場合、先行権者が審判請求する必要があります。

見本

共同体意匠登録出願では、従来の表現手段(図面)ではなく、平面意匠の見本を用いることができます。

意匠が繰り返し模様の場合、繰り返し模様全体を見本に表示しなければなりません。

この方法は、意匠が布地や壁紙の場合に通常使用されます。

見本は26.2cm×17cm、50gおよび厚さ3mmを超えることはできません。

各意匠について、見本の複製5部を提出する必要があります。

現在のEU加盟国

オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス共和国、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン。

見本による共同体意匠登録出願の場合の公開の延期

公開の延期を請求する場合にのみ、意匠の表現物の代わりに見本を使うことができます。延期を請求することにより、意匠が登録時に公開されず、公開を出願日または優先日から最長30ヶ月延期させることができます。

意匠を公開するためには、意匠を表す標準的な表現物(例えば写真)を公開日より少なくとも3ヶ月前に提出し、(出願時に公開手数料を納付していないとき)公開手数料を納付する必要があります。

 

ここに示した情報は、簡略化したものであり、法律ならびに実務の決定的な情報ではありません。

This information is simplified and must not be taken as a definitive statement of the law or practice.  Please refer to our English-language website for more information.