知的財産における意匠とは、保護の種類によって定義は異なりますが、一般的には、製品(product)の形状、形状に施された装飾(ornamentation)である点で共通しています。本質的には、製品の意匠は、構造や作用の技術的原理に関るものではなく外観に関わるものです。
意匠を保護する方法にはいろいろあります。このインフォメーションシートでは、欧州連合内でいかにして登録意匠を得るかについて説明します。ほかにも意匠の保護に関する3つのインフォメーションシートがあります。1つは、英国登録をテーマにしたもの、1つは、国際登録をテーマにしたもの、1つは、無登録で自動的に保護が受けられる方法をテーマにしています。
登録共同体意匠には、独占権が付与されます。すなわち、他人が、故意か否かにかかわらず、登録意匠を実施することを停止することのできる権利です。
登録共同体意匠は、その意匠が製品の形状に関わり、かつ装飾的であれば、欧州連合内において他人がその意匠を具体化した製品を製造、使用、販売、輸入、輸出することを禁止できる排他権の対象となります。
こうした権利は、「知識を有する利用者(informed user)」に異なった印象を与えない意匠(類似意匠)にも及びます。
意匠権者は、EU域内で、模倣ではなく独自に創作された意匠であっても、共同体意匠に同一または類似の意匠を無断で実施する者に対して訴訟を提起することができます。
登録共同体意匠を取得するためには、スペインのアリカンテに所在する、欧州連合知的財産庁に出願しなければなりません(旧名称はOHIM( 欧州共同体商標意匠庁))。
意匠は、製品の全部または一部(内部も含む)であって、製品の線、輪郭、色彩、形状、織り方、素材または装飾から生じる意匠です。
「製品」には、視覚的な記号、たとえば、パソコンのアイコン、印刷用タイプフェイスも含まれます。
意匠登録出願の対象となる意匠は、次の2つの要件を満たす必要があります。
2つの要件は、出願日前に公知となった意匠との比較で判断されます。
意匠は、刊行物、使用、その他の手段により公知となります。
12ヶ月の新規性喪失の例外が認められています。すなわち、出願日前12ヶ月以内であれば、創作者自らが意匠を開示するなどして新規性を喪失した場合でも新規性または個性的特徴を失っていないものとして扱われます。
しかし、欧州連合以外でこうした例外規定をもたない国や例外規定期間が短い国がありますので、開示した意匠により登録が妨げられることがあります。
例外規定は、12ヶ月の期間内において創作者とは無関係に発生した開示は含みません。したがって、出願は意匠を開示する前に完了しておくべきです。
もう一つの新規性喪失例外規定は、有効な出願日前、関連業務の分野において欧州経済領域(EEA)にて公知となったとはいえないような出願前の開示(prior disclosure)で、これは公知になったとはみなさないことになっています。
この規定は、開示の程度、場所、時期が曖昧な開示は除外するという法意があると考えられます。
意匠が新規であるといえるためには、非本質的な些細な点を越えたところで、先行意匠とは違うものでなければなりません。
意匠に個性的特徴があるといえるためには、それは先行意匠に比べて全体的に異なった印象を「知識を有する利用者」に与えるものでなければなりません。ここでいう「知識を有する利用者」は、製品の最終ユーザーが該当するものと思われます。
創作者があまり創作の自由度をもたない分野では、登録性のある意匠と先行意匠との差は、大きな自由度をもった場合に比べると、小さくなります。これは登録意匠に基づく侵害事件にも反映されます。
複合製品とは、解体および再組立を可能にする交換可能な複数の構成部品(component parts)から構成されている製品をいいます。
こうした製品の構成部品の意匠は、構成部品が複合製品の通常の使用中に目で見える場合にのみ登録されます。
さらに、複合製品を、構成部品を使ってもとの外観に戻す修理行為は、その登録意匠の権利を侵害することにはなりません。
これは、たとえば、車の「非純正」部品の製造・販売は認めておきたいというのが狙いです。
たとえ登録意匠は、製品の技術的機能を果たすのに専ら必要とされる意匠の特徴、または、製品を他の製品と連結させるためまたは他の製品内に・外にもしくは他の製品に対して配置し、いずれかの製品がその機能を発揮するために必要な特徴は、いずれも保護されません。
しかしながら、ユニット式の製品の組立に役立つ意匠の登録は可能です。
重要な紋章類、たとえば、オリンピック標章、王室の紋章、国旗などを含む意匠は登録されません。
登録は25年存続しますが、5年毎に登録料を納付しなければなりません。
欧州共同体意匠登録出願を行うと、その出願日が優先日となり、これに基づいてその6ヶ月以内に他国に優先権を主張して出願することができます。ただし、その欧州共同体意匠登録出願が最初の出願でなければなりません。
出願から登録までの流れは次のようになります。
出願書類の作成には、意匠の特徴を示した図面または写真が必要です。もし、見本または模型があるならば、それを基に私共が図面または写真を作成することができます。三次元的(立体的)意匠は7図面が必要です。
さらに、次の事項を明らかにする必要があります。
意匠創作者の詳細の記載は任意です。
場合によっては、意匠の簡単な説明を加えることができます。
出願と同時に出願手数料および公告手数料、および/または意匠を秘密にするための手数料を納付する必要があります(下記参照)。
優先権を主張するときは、出願から3ヶ月以内、または欧州連合知的財産庁が指定する期間内に優先権の基礎となった第一国出願の証明書を提出する必要があります。優先権書類を出願と同時に提出すると費用が抑えられます。
共同体意匠は登録されると公告されます。しかし、公告は、請求によって出願または優先日から30ヶ月まで公告の繰延が可能です。これにより、通常の公告に代えて公告が繰り延べされた旨の公告が出されるものの、意匠と出願内容は公にされることはありません。この繰延には、請求手数料の納付が必要でありまた、公告前に公告手数料の納付が必要です。公告手数料は、出願日(または優先日)から30ヶ月の終了の3ヶ月前までに納付すればいいことになります。
繰延期間内は、第三者に対し権利を行使するためには、先ず登録内容を個別にその第三者に通知することが必要です。
意匠に係る製品がロカルノ分類で同じ分類に属する限り、複数の意匠を一出願とすることが可能です。ロカルノ分類は、比較的広い分類方式をとっています。
【ロカルノ分類例】第1類:食品、第6類:家具類のように広い区分方式になっている。
この複数意匠出願の利点は、本来の一意匠一出願に比べて費用が割安になるということです。
複数意匠出願の各意匠は夫々独立した権利の対象ですから、独立してライセンスの目的にもなり、譲渡の対象にもなります。
出願は方式審査のみです。先行意匠の調査は行われません。
審査が終わると、意匠は登録され、公告されます(ただし、公告の繰り延べが認められます(上記参照))。方式的要件を具備すれば、出願から公告までは数週間程度です。
先行する意匠に比べて、登録意匠に新規性がない、または個性的特徴がないと判断されれば、登録意匠の無効が請求できます。その場合、先行意匠の所有者が無効を請求する請求人適格を有します。
二次元的意匠の場合は、図面や写真に代えて、見本を提出することができます。
意匠が繰り返し連続する模様からなる場合、連続する模様全体が見本に表れてなければなりません。
連続する模様の意匠の例は、織物または壁紙に多く見られます。
見本は、26.2cm x 17cm, 50gまたは厚み3mmを超えることはできません。
見本は、各意匠につき5部必要です。
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公告繰延を請求する場合にのみ、意匠の表現物の代わりに見本を使うことができます。繰延を請求することにより意匠は登録時に公告されません。繰延は出願日または優先日から30ヶ月までです。
意匠を公告するためには、意匠を表す標準的な表現物s(たとえば、写真)を公告日より少なくとも3ヶ月前に提出する必要があります。また、出願時に公告手数料を支払っていないときは、その時点で公告手数料を支払う必要があります。
登録共同体意匠は、特に登録されなくても自動的にジブラルタルでも保護されます。
本説明書は、あくまでも登録共同体意匠制度の概要であり、法ならびに実務の決定的なものでない点ご了解ください。
This information is simplified and must not be taken as a definitive statement of the law or practice. Please refer to our English-language website for more information.
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