英国商標 - 基礎編

何百年もの間、商人は商品の出所を示すためにシンボルやマークを付けてきました。英国では、400年以上前のジェームズ1世の時代までさかのぼることができる、商標に関わる事件が何世紀にもわたって起きています。

概略

1875年に商標登録法が制定される以前にも、商標に関する法律はいくつかありましたが、包括的なものではなく、商標登録法制定により、あらゆる種類の商品について商標登録が可能となりました。役務について商標登録が可能になったのは、それから100年以上が経過した1986年です。

登録商標は、商標権者に強力な権利を与える、非常に重要で価値のある資産です。

1875年の商標登録法に基づき登録された最初の商標、商標登録第1号は、Bass, Ratcliff & Gretton Limitedの名義で1876年1月1日に登録されました。

この商標は現在も有効であり、現在はBrandbrew S.A.の名義となっています。

商標とは?

  • 商標とは、顧客が出所を知らなくても、商品・役務が特定の出所によるものであることを識別できるようにするもの(例えば、単語や標識)です。
  • 評判の良い事業者は、自身の商品・役務が望ましく信頼できる質であることを望むので、顧客は、事業者の商標を質の保証ととらえるようになります。
  • 標章は、質の高い製品または役務に対する広告、宣伝および正しい使用によって適切に展開されれば、非常に価値のある重要なものとなります。
  • したがって、英国内外で標章を保護することは、商標の評判と生産者の評判にとって極めて重要です。
    標章を保護する最も強力な手段は、登録することです。

標章を登録するには?

  • 標章を登録するには、英国知的財産庁に出願する必要があります。英国知的財産庁は、出願が登録の法定要件を満たしているかどうかを審査します。
  • 標章を選択する際にこれらの定要件を考慮し、商標登録簿を検索(先登録商標を調査)すれば、その後の多くの時間と費用を節約することができます。

新しい標章の基本ガイドライン

登録されるために、以下の要件を満たすこと:

  • 標章は、識別力がなければならない。
  • 標章は、単一の単語、ロゴ、図形またはこれらのいずれかの組合せであることができる。実際、視覚的に描写できるものであれば何でもよい。
  • 物体や容器の機能の結果による形状でない限り、標章は立体的な形状でもよい。
  • 標章は、記述的であってはならない。例:スポーツウェアに対してSPORTY
  • 標章は、欺瞞的なものであってはならない。例:木綿製品に対してSILKY
  • 標章は、一般的な姓や地理的名称であってはならない。例:JONESやLONDON
  • 標章は、国旗や他人の紋章のようなものであってはならない。
  • 標章は、先登録商標と混同を生じるものであってはならない。この要件を満たすために、商標登録簿の検索を行います。

疑義がある場合は、私共にご相談ください。

上記の要件は、全て新しい(未使用の)標章に適用されます。場合によっては、ある標章が新しく未使用のときには登録可能でなかったとしても、その標章を数年間使用することで、その標章が登録可能になることがあります。

あなたの新しい標章/ブランド/ロゴは使用できるものですか?

市場や競合他社をよく知っていても、新しい標章を使用する際に他人の権利を侵害しないとは断言できません。もし侵害した場合(たとえ意図していなくても)、その結果は非常に深刻なものになる可能性があります。

このようなリスクを軽減する1つの方法は、新しい標章の使用を開始する前に、抵触する可能性のある先登録商標の調査を私共に依頼することです。これを強くお勧めします。

状況は、標章を使用しようとする国毎に異なる場合があります。通常、国毎に個別の調査と個別のアドバイスが必要です。この点については、私共がアドバイスいたします。

なぜ標章の登録が必要なのか?

1994年施行の商標法(Trade Marks Act 1994)により、英国における登録商標の見方が変わりました。

特に、登録商標の権利が拡大され、登録のメリットが増えました。

標章を使用する事業者は、商標の使用を通じてコモンローに基づく権利を取得します。しかし、これらの権利行使は、商標登録から生じる権利よりも困難です(且つ費用がかかります)。

また、標章を短期間しか使用しておらず、商標登録出願もしていない場合、他人が「あなたの」標章を登録し、あなたの標章を使用する権利を妨害することを阻止できない可能性があります。

商標登録により、指定商品・役務に関する商標の使用を独占することができます。

コモンローの「パッシングオフ(passing off)」

標章の所有者は、その標章を登録しなくても何らかの権利を取得することができます。ある標章を使用する事業者は、その標章に関連する「業務上の信用」を獲得します。「業務上の信用」とは、顧客が他の事業者ではなく、ある特定の事業者を利用する要因となる質と定義されています。

商標権者は、その標章を使用して、公衆にその標章の所有者の商品であると誤認させるような行為を行った他の事業者を訴えることができます。これが「パッシングオフ」訴訟です。

侵害

英国では、商標登録により、商標権者は、指定商品・役務について登録商標を使用する排他的権利を有します。また、登録によって、他者がその商品・役務について混同するほど類似の標章を使用することを禁止する権利も付与されます。状況によっては、商標権者は、非類似の商品・役務について標章を使用することを禁止することができます。

登録のメリット

登録商標を使用・保護する権利がより強固になります。

登録商標の侵害訴訟は、パッシングオフ訴訟よりも一般的に容易で、迅速かつ低費用です。

登録商標のライセンスは、はるかに安全です。

英国で登録商標を有することは、多くの外国での商標登録出願への足がかりとなります。

標章を登録することで、他者に自身の標章であることを警告し、抑止力とすることができます。

標章を登録すべき場合とは?

標章を変更する費用が登録費用を上回りそうな場合。広告費用を考慮すれば、重要な新しい標章やブランド名を市場に投入するほぼ全ての事例がこれに該当するはずです。

その商標が数ヶ月を超える将来性を持っていると考えられる場合。

商標の登録が早ければ早いほど、上記のような登録のメリットが得られます。

英国での登録方法

標章を選んだら、英国知的財産庁に商標登録出願します。商標登録出願の際には、標章を使用する商品・役務を指定しなければなりません。

商標登録簿は、商品および役務を45の区分に分類しており、例えば、清涼飲料水は第32類に分類されます。指定商品役務の区分毎の庁手数料が定められています。

理論的には、1つの区分に含まれる全ての商品または役務について、また全ての区分について商標を登録することが可能です。しかし、この方針には3つの欠点があります:

  • 非常に費用がかかる。
  • 出願人が指定した全ての商品・役務に対して商標を使用することを真に意図していなければならないため、英国知的財産庁は、おそらく許可しないであろう。
  • 商標が5年間、全指定商品・役務について使用されなかった場合、登録は無効となり得、不使用の商品・役務については登録から抹消される可能性がある。

したがって、近い将来に商標を使用する予定の商品・役務についてのみ商標登録出願することをお勧めします。

英国の商標登録は、10年毎に更新する必要があります。英国に加え、他の欧州諸国でも商標を保護したい場合は、欧州連合商標(EUTM)1出願という選択肢もあります。詳しくは、「欧州連合商標 - 基礎編」参照。

海外での商標登録

海外での商標登録は、基本的に英国と似ています。各国の法律の詳細や登録手続は異なりますので、各国の商標弁理士のアドバイスが必要です。

多くの国では、商標権は登録によってのみ取得できます。したがって、海外での権利保護を使用に頼るのは危険です。現在、一般的には、関心のある国毎に個別の商標登録出願が必要です。

一方、2つの国際的な商標登録制度があります。(a) 欧州連合(EU)27ヶ国をカバーする欧州連合商標(EUTM)制度、(b)様々な国をカバーするマドリッド協定およびマドリッド協定議定書制度です。ご希望があれば、これらについて私共がさらに詳しくアドバイスいたします。

事業を行っている、または事業を行う予定の国では、できるだけ早く商標登録出願を行うことをお勧めします。そうすることで、第三者があなたの標章を先取りして登録してしまい、あなたがその国でその標章を使用した事業ができなくなるという事態を防ぐことができます。

英国と同様に、標章の使用を開始する前、および商標登録出願を行う前に、まず海外の商標登録簿を検索する必要があります。

私共の商標関連サービス

  • 私共は、英国、上記の国際的な制度(EUTM、マドプロ)、海外での標章の登録性についてアドバイスいたします。
  • 英国での出願に先立ち、同一または類似の標章が既に存在するかどうかを調査いたします。また、他国での調査の手配もいたします。
  • 適切な商品および役務の分類をアドバイスし、英国知的財産庁に商標登録出願いたします。海外への商標登録出願には、過去の経験に基づいて選ばれた現地の提携事務所を利用します。
  • 複数国で保護するためのルートが複数ある場合、適切な戦略についてアドバイスいたします。
  • クライアントの代理人として、英国知的財産庁および欧州連合知的財産庁(EUIPO)2と直接やり取りし、商標登録出願に対する拒絶理由等に対応します。
  • 広告やマスコミ報道で使用される標章の保護方法についてアドバイスいたします。
  • あなたの商標と抵触する可能性のある標章について他者が商標登録出願した場合、出願のウォッチングを手配し、その商標の登録を阻止する手段を講じます。
  • 侵害の可能性について、また侵害者に対する商標権の行使についてアドバイスいたします。
  • 譲渡、代理店や販売店の選任、ライセンス契約における商標の保護についてアドバイスいたします。

1 以前は欧州共同体商標(CTM)として知られています
2 以前は欧州共同体商標意匠庁(OHIM)として知られています

 

ここに示した情報は、簡略化したものであり、法律ならびに実務の決定的な情報ではありません。