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特許異議申立

特許異議申立

欧州特許が付与された時点で、これに対する異議申立てが可能となる。異議申立ては欧州特許庁(「EPO」)で取り扱われるが、指定されたすべての国で有効な一括手続きでも取り扱われる。すなわち、EPOでの異議申立て手続きは、国内の無効または取消に関する手続きとは別個で、かつこれに加わるものである。

異議申立て期間

欧州特許に対する異議申立ては、欧州特許公報での特許付与から9か月以内であればいつでも可能であり、これは付与後の手続きである。異議申立て期間を延長することはできない。申立て期間中に、異議申立通知を提出し、異議申立手数料を納付しなければならない。

申立てを行える者

法人または自然人の別なく、いかなる者も異議申立てを行える。大審判廷の決定によれば、名義上の異議申立人(「藁人間」と呼ばれる)も含まれ、これによって、異議申立人の実態を隠すことが可能になっている。

ただし、そのような手続きは、その特許権者本人が異議申立てをしていることを隠すようなもの(自己に対する異議申立ては禁じられている)や、EPOにおいて不適切な代理人を立てるようなものであってはならない。

特許権者は、自己の特許が付与された後に一括の取消または限定を要請できるが、異議申立て手続きの方がかかる取消または限定手続きに優先する。

異議申立ての手数料

異議申立期間中に、775ユーロ(約1090米ドル)の異議申立手数料を納付しなければならない。ただし、全体の費用はこれよりはるかに多額になる可能性がある。

異議申立通知においては、申立人および異議申立ての対象である特許のそれぞれの詳細と共に、

  • 異議申立ての範囲 (どのクレームに異議を申し立てているか)、および
  • 異議申立ての根拠を述べると共に、
  • 異議申立ての根拠となる証拠(先行技術等)、事実、および主張を示さなければならない。

異議申立てが許容されるためには、応答すべき申立て内容を特許権者と異議部が異議申立書から理解できるようでなければならない。

異議申立ての根拠

異議申立ての根拠となり得るものは以下の3つしかない。

  • クレームされた発明に特許性がない(対象事項が特許適格性の対象外であるか、新規性や進歩性がないため)
  • 特許の明細書が、そ当業者が実施できる程度に、その発明を十分に、明確に、かつ完全に開示していない(「開示不十分」)
  • その欧州特許の対象事項が、当初提出された欧州特許出願の内容を超えている(「新規事項の追加」)

最初の手続き – 特許権者の意見書

異議申立ては、通常3名で構成される異議部で取り扱われる。異議申立て通知は、まず特許権者に伝えられ、許容性について審理された後、EPOが4か月の期間を設定し、その期間内で特許権者が異議申立てに対する意見書を提出するよう案内される。この4か月間は延長可能である。

意見書を提出しなくても自動的には特許が取り消されないため、この期限は致命的なものではない。いずれの場合もEPOは、異議申立てを自ら審理し、異議申立書が提出された時点以降に異議申立人および特許権者が提出したものを根拠として決定を下す。

特許権者の意見書がその後異議申立人に伝えられ、以降は現実に決まった手順はない。実際、異議部が望めば、この伝達後すぐに決定を下すこともできる。

したがって、予め注意すべきこととして、異議申立人または特許権者は、自分に不利な決定を下す意思を異議部が固めた場合に備え、最初に文書を提出した時点で意見聴取(「口頭審理」)を要請すべきである(以下も参照すること)。ただし一般的に言って、EPOは、その申立て内容に関する自らの予備的見解を出せるようにするため、必要と考える範囲および回数でさらなる文書提出を両当事者に促すのが通例である。

各当事者に対しては、それまでに起こった事項について、意見とさらなる主張を提出するための機会が同じ回数だけ与えられるものと思われる。

いずれかの時点で、予備的かつ拘束力のない見解をEPOが出すことが多く、これによって両当事者は、それぞれの申立て内容の本旨がEPOによってどのように受け止められたか知ることができる。

請求

特許権者はしばしば、意見表明の段階、あるいは異議申立て手続きの後の段階でも、何らかの「請求」を行う。これらは、「主請求」、「第一副請求」(または「第一補足請求」)、「第二副請求」などと呼ばれる。これらは、クレーム補正による一連の譲歩的ポジションを表すものであり、特許権者はこれらを順番にEPOの審理に付託する権利を有する。

ただし、ある要請が許容できないと判断された後にのみ、次の要請が審理されることから、要請する順番を注意深く選択する必要がある。これらの要請のうち1つが許容できると判断された場合、その特許は、許容されたその要請を基にして維持されることになる。

遅れて提出された証拠または請求

異議申立て手続に何を持ち込むのであれ(先行技術等)、最初の時点で、異議申立て通知と共に提出するのが望ましい。同様に、特許権者による要請は、意見書提出の段階で提出するのが最善策である。厳密にいうと、それ以降に提出された証拠を手続きで取り扱うことの可否は、EPOの裁量で決められる。「非常に重要な関連性」がある場合、通常は許容される。有効性に疑義がある特許は公共の利益に反して存続が認められるべきではないというのが、EPOの基本的な原則だからである。

ただし、遅れて提出された追加的証拠の関連性が少なければ少ないほど、また、その提出が遅れれば遅れるほど、許容される可能性はそれだけ少なくなる。したがって、異議申立ての提出を検討する際には、どのような証拠を提出するにせよ、異議申立期間が満了する前のできるだけ早い時期にその準備(実験データの探索や生成など)を始めることが重要である。

口頭審理の準備

上述のように、異議申立てにおいて最低でも一方の当事者(通常は両当事者)が「口頭審理」を要請するのが通常である。口頭審理とは、異議部のメンバーに対して当事者が自らの申立て内容を口頭で述べる審理である。あらゆる当事者に発言権があるというのが、欧州特許条約の法律の中核にあることから、審理部は、この要請を拒否することはできない。

口頭審理に先立って、EPOは日付を設定し、議論のポイントに関する指示書を発行し、通常そこには上述した予備的意見も併記されている。日付を変更するのは通常かなり困難であり、「重大かつ実態を伴う理由」を示さなければならない。

EPOはまた、口頭審理の通常1か月前(2か月前ということもある)の日付を設定し、その日までに、その審理において検討すべき新しい証拠、または(特許権者が提出する)新たな主請求もしくは副請求を提出させる。その日以降提示された新しい事実および証拠は、手続きの対象事項が変わったという理由で認められない限り、検討する必要はない。

口頭審理

口頭審理は、裁判所での審理の小型版とも言うべきものだが、裁判所審理よりも形式にこだわらずに行われる。特許が記述された言語で実施されるが、要請があれば、欧州特許条約の別の公用語への同時通訳が許可される。理論的には、いずれの当事者も、他の当事者(異議部を含む)の意表を突くようなことはしてはならないが、残念ながらしばしばこれが起こる。この審理は、本来、提出済みの証拠を基にして、通常はすでに提示された主張を繰り返したり更に展開することを目的としている。

時には、証拠を提供するために証人が呼ばれる(ただし、何らかの通知を行い、正式な要件が満たされることを条件とする)。通常、各当事者の欧州特許弁理士が申立て内容を説明する。決定はほとんど常にその審理の場で下され、かつ言い渡され、その後(通常は1か月から6か月後)正式な決定が書面で発行される。

口頭審理と書面による決定の間でいずれかの当事者が文書を提出しても、考慮されない。

控訴

異議部の決定で悪影響を受けた当事者は、控訴通知とその理由書を提出できる。その期限は、通知書は書面による決定日から2か月以内、理由書は同じ日から4か月以内で、それぞれ延長は不可である。

異議申立てにかかる費用

異議申立てに関する費用には大きな幅がある。実質的な異議申立通知書を作成し提出する費用は、申立て内容の難易度および先行技術の広範さによって異なるが、通常は3000~15000英国ポンド (約4500~23000米ドル)の範囲で見積もっている。ただし、その分量と複雑さによっては、費用がかなり高くなることもある。その後、異議申立て手続きの過程で当事者間のやり取りが1~2度生じ、口頭審理の準備と実施を行うような事案の場合、推定費用は5000~40000英国ポンド (約7500~60000米ドル)の範囲と思われる。控訴した場合は、おそらく、同様の費用が発生する。

理論上は、例えば調査の厳密さを緩めたり分析の深さを加減することによって当該費用を劇的に減らすこともできるが、これは推奨できない。多くの場合、徹底した準備が、異議申立てや防御の成功の鍵となるからである。

手続き期間の長さ

EPOが新たに始めた「Early Certainty」(確実性の早期化)イニシアチブでは、単純な事案の場合、異議申立期間の満了後15か月以内に決定が下されるべきとされ、EPOはこの目標の達成に向けて取り組んでいる。

ここに記載する情報は単純化されたものであり、法律やその実務に関する断定的な記述と受け止められるべきものではない。

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