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異議申立手続

異議申立手続

以下述べるところは、欧州連合知的財産庁(EUIPO)1に対する登録異議申立手続きの概要(主要点)です。

  • 異議申立は、欧州連合商標(EUTM)2出願が直接EUIPOに出願されたものについては出願公告から3ヶ月以内に 行わなければなりません。
  • 異議申立書が提出された後2ヶ月の・クーリングオフ期間・があります。この期間は22ヶ月まで延長できます。
  • クーリングオフ期間満了後2ヶ月以内に異議申立人は異議申立理由の証拠を提出しなければなりません。出願人 には2ヶ月間の答弁書提出の期間が与えられます。
  • 最終決定は、異議部の3人の審判官の合議でおこなわれます。
  • 敗訴側は費用を負担しなければなりません。
  • 異議決定に不服があれば控訴できます。

最低の要件

ⅰ)異議申立期間は3ヶ月で延長はできません。異議申立書はEUTM出願公告の日から3ヶ月以内に提出しなければなりません。しかしながら、マドプロの国際登録でEUTMが指定されているときは、3ヶ月の異議申立期間は、EUIPOによる内容の再公表後1ヶ月経過後となります。

ⅱ)異議申立書には異議の理由を明示しなければなりません。異議申立理由となり得るものは次の通りです。

  • 対象となる商標が、先行する登録商標と同一または類似であり、かつ同一または類似の商品を指定する場合。ただし、先行の登録商標が著名である場合は商品の類否は問いません。
  • 対象となる商標が、登録された場合、一地域を超えて周知性がある先行の・標章・(未登録商標)と競合する場合、
  • 対象となる出願が、商標の所有者の承諾を得ないで代理人(例えば、代理店)により出願された場合、
  • 対象となる商標が、周知の標章(パリ条約第6条の2)と競合する場合

異議申立は先行権に基づき相対的拒絶理由がある場合にのみ可能です。すなわち絶対的拒絶理由が有る場合、例えばマークが記述的あるいは紛らわしい場合、異議申立は認められません。不正は絶対的拒絶理由です。

ⅲ)異議申立人は、異議申立適格がなければなりません。適格性を有する者は次の者に限られます。

a) 先行商標の所有者および/または先使用者

異議申立が先行するEUTMに基づく場合は、異議申立人は、異議申立書が受理された日前に先行するEUTMの所有者として登録されていること、または、商標の所有者である旨の登録申請を完了した者でなければなりません。

異議申立が、国内商標または”標章”に基づく場合、当該国の法律がそれら商標または”標章”に異議対象のEUTMの使用を排除する権利を与えていなければなりません。

b) 先行商標の所有者から使用を許諾されている者

EUTMの使用権者は登録される必要はありませんが、使用権者自らが適法な使用権者であることを立証しなければなりません。

国内商標の使用権者の場合は使用権者の訴訟能力は国内法の規定によります。

c) 国内法の下で、未登録商標の先使用権が認められている者

ⅳ)異議対象の出願の詳細を明確にする必要があります。

ⅴ)異議申立手数料を支払わなくてはなりません。

異議申立期間満了までに異議申立手数料が支払われない場合、その異議申立はなかったものとみなされます。そのため異議申立書はできるだけ異議期間中に余裕をもって提出する必要があります。

ⅵ)異議申立が根拠とする先行商標または権利を、出願番号または登録番号、優先日、標章の態様によって明確に表示する必要があります。

先行商標が登録済みまたは出願係属中(ただし、登録されることが条件)の場合、その出願日が異議対象の商標の出願日(優先権主張している場合は優先日)より前でなければなりません。この場合の適格な先行商標は次のいずれかでなければなりません。

  • EUTM
  • EU加盟国(またはベネルクス)で登録された商標
  • マドプロまたはマドリッド協定による国際登録商標であってEU加盟国で有効な商標
  • パリ条約第6条の2に規定の周知標章、または欧州共同体またはEU加盟国で周知な登録商標

こうした要件を異議申立期間終了までに満たさなかった場合、異議申立は却下されますが、納付した異議申立手数料は返還されません。

(実際は、英語での異議申立が多いのですが、他の公用語、すなわち、フランス語、ドイツ語、イタリア語またはスペイン語で行われることもあります。)

クーリングオフ期間

異議申立書がEUIPOにより受理されて事件番号が付されると、出願人またはその代理人に出願が異議申立があった旨が通知されます。

異議申立書が最低の方式要件を満たしていると判断さると、その旨両当事者に通知されます。この通知から2ヶ月後に異議申立手続が始まるとみなされます。これにより、2ヶ月のクーリングオフ期間が設けられ、当事者同士の話し合いにより、対立関係に発展する前に早期に異議の決着をつけることができます。このクーリングオフ期間は、当事者双方の合意により延長できますが、延長期間の長さは当事者の希望に左右されず、自動的に合計24ヶ月まで延長されます。もし、当事者がクーリングオフ期間を終了したいと思えば、その当事者は一方的に話し合いを止めてしまうことができます。

クーリングオフ期間中出願人が出願を取下げたり、または商品または役務を限定して異議対象から外した場合、異議申立手数料は本人に返還されますが、異議申立がクーリングオフ期間中に取り下げられたときは手数料は返還されません。さらに、クーリングオフ期間中に和解になっても費用負担の裁定はありません。期間中和解が成立しなかった場合は異議申立手続が開始されます。

事実、主張、証拠

異議申立人は、申立書と同時に、事実、主張、証拠のすべてを提出しなければなりません。所定の提出が終わり、証拠が出揃ったと述べれば、出願人にはクーリングオフ期間の終了後、通常、2ヶ月の反証提出の機会が与えられます。

もし、異議申立人の事実、主張、証拠のすべてが早期に出揃わなかった場合、異議申立人には、更なる証拠を提出するため、クーリングオフ期間満了後少なくとも2ヶ月の期間が与えられます。出願人にはさらに通常2ヶ月の期間が与えられ、補充された証拠に反論する機会が与えられます。(この点については下記参照のこと。)

どんな証拠が出されるのかは、異議申立の性質によりますが、英国の商標登録異議申立の場合に似ています。たとえば、登録証の写し、周知性を証明する証拠などです。情報としては、いかにその商標が市場で好評かを示すもの、需要者間に混同が起っている証拠、広告費用、登録されている商標や使用されている商標の見本などです。異議申立を理由付ける証拠書類は、異議申立手続きの言語に翻訳する必要があります。万一、これら証拠が他の言語で作成されたとしても翻訳のために期間が延長されることはありません。

EUIPOは、出願人および異議申立人にできるだけ証拠や意見書を同時に提出することを希望しています。しかし、複雑な事案の場合は、EUIPOが必要と認める限りできるだけ多くの意見のやりとりがあってもよいとしています。

使用の証拠

異議申立が、登録されて5年以上経過した先行する国内商標またはEUTMを根拠にした場合、出願人は異議申立人に対し、出願公告に先立つ5年の間に、異議申立人が、根拠としている登録商標を、国内商標の場合は問題のEU加盟国、EUTMの場合は、十分な数の加盟国内において、指定商品または指定役務に関して現に使用していることの立証を求めることができます。異議申立人の証拠が異議手続の言語と異なる場合、EUIPOは訳文の提出を求めることになります。

問題の商標が使用されていなかったり、使用が不十分であった場合、その商標は、先行はしていても異議申立理由としては不適格です。異議申立人が、異議申立が根拠としている商品または役務の一部のみを使用していた場合は、その異議申立に関しては使用している商品または役務についてのみその商標は登録されているとみなされます。ただし、不使用について正当な理由がある場合はその限りではありません。

出願人は、答弁書の提出期間内に、異議申立人に対し使用の証拠を出すよう要求する必要があります。使用の証拠が要求された場合、出願人は、異議申立人が使用の証拠に対する答弁書を提出するまで答弁書の提出を遅らせることができます。

出願の分割

出願人は、出願を指定商品または指定役務毎に分割することができます(ただし、期間に限定あり)。その場合、分割した商品または役務同士が重複しないようにしなければなりません。さらに、分割は、異議申立を受けている商品または役務の分割を狙ったものであってはなりません。出願の分割は以下の時点ではできません:(ⅰ)出願番号が付与されるまで、(ⅱ)登録料納付の通知が出された後、(ⅲ)3ヶ月の異議申立期間中。分割された複数の出願を再度一出願にまとめることはできません。

分割出願にはそれなりの費用を要しますが、指定商品または指定役務の一部のみが異議申立を受けた場合は、異議申立に関係のない商品または役務を分割すれば早期に登録をとることができます。

出願の取下げ

出願人はいつでも出願を取下げ、または指定商品または指定役務を削除することができます。もし、取下げまたは削除が、クーリングオフ期間の終了後に行われたときは、出願人は、異議申立手数料と、異議申立人が負担した費用(ただし、EUIPOが裁定した上限以下)を負担しなければなりませんが、両当事者の話し合いによります。EUTMは単一の権利ですから、地域的に分けることはできませんが、特定の国への変更の方法はあります。詳細は下記をご参照ください。

出願人は、EUTM出願そのものを取下げることも、またはEUTM指定を止めて通常の国内出願に変更することもできます。マドプロ経由のEUTM出願の場合はEUTM指定を止めてEU加盟国の希望国への通常の国内出願に変更することができます(ただし、マルタ共和国はマドプロには加盟していないので除外)。

同様に、出願人が、EUTM出願の指定商品または指定役務を限定した場合は、削除した商品または役務について通常の国内出願に変更することができます。

いずれの場合も出願変更はあまり賢明な方法とはいえません。というのは、異議申立人の保有する有効な先行の権利と衝突する可能性があり、国内レベルで拒絶を受ける可能性があるからです。

異議申立手続の中断

中断は申請により強制できません。EUIPOは、真正かつ適切な理由があったときだけ中断を決定するに過ぎません。中断できるのは、たとえば、次の場合です。

ⅰ)異議申立が係属中の出願に基づいている場合でもその先行する出願が登録寸前で異議決定前に登録になる状態のとき。

ⅱ)複数の異議申立があったとき。すなわち、複数の異議申立が同じ出願に対しなされた場合、EUIPOは、その内の幾つかを選択的に審査してそれ以外は中断とします。

ⅲ)その他の事情、たとえば、

  •  当事者が要請したとき、この場合は、当事者双方が中 断を要請する必要があります。しかし、当事者一方の要請でもEUIPOが合理的理由ありと判断した場合、または、当事者一方の拒否が明らかに不適切と判断された場合は許可されることがあります。
  • 司法上または行政上の行為。
  • 第三者による情報提出があった場合(例、識別性なし)

手続中断は、EUIPOが、登録取消の決定を出す可能性が高いときだけに行われます。疑わしい事案ではすべてEUIPOは、複数の異議申立を並行して扱います。一旦出願が拒絶されると、中断されていた異議申立は処理されたものと扱われ、手続は完了します。異議申立人が支払った手数料の半額がEUIPOにより返還されます。

異議申立がマドプロ経由のEUTM出願に対するもので、かつ、識別性等の絶対的拒絶理由による拒絶が解消していない場合、異議申立は、その拒絶理由の審査が行われている間中断となります。もし、絶対的拒絶理由が維持されると、異議申立手続は終了し、手数料は返還されます。逆に、絶対的拒絶理由が根拠なしと判断されると、異議申立手続は再開されます。

異議申立の結論

決定

EUIPOは、通常、異議部の審判官3人の合議体により当事者双方の主張および証拠を審理して決定を下します。原則として、異議申立手続は書面審理であり、決定も書面により行われます。当事者いずれも口頭審理を要求することはできません。口頭審理は、EUIPOがその方が”好都合(expedient)”と判断したときにだけ行われます。理論上は、EUIPOが当事者を召喚して行いますが、実際に行われたことは一度もありません。

費用

原則として敗訴側は、自らが手続に要した費用は勿論、勝訴側が負担した手数料も負担しなければなりません。これには、交通費、諸雑費、代理人の費用などが含まれます。費用を種類分けして出した標準額があり、裁定される費用は実際にかかった費用より低額になるのが普通です。さらに、異議申立が一部勝訴となった場合、EUIPOの判断で最低額が減額されます。

服の申立

異議の決定に不服がある当事者は、決定書送付から2ヶ月以内に不服の申立ができ、理由書は決定書送付から4ヶ月以内に提出しなければなりません。例外的に、さらに上級審として欧州連合の第一審裁判所、さらに、欧州連合司法裁判所へ控訴することができます。

異議決定後の出願変更

異議申立が、EU加盟国の1ヶ国または2ヶ国の先行権に基づき認められた場合は、たとえ異議申立人が別のEU加盟国で権利を持っていたとしても、EUIPOは、それら権利を考慮する必要はありません。拒絶されたEUTM出願(またはその一部)は、拒絶理由となった先行権のない国に対し通常の国内出願をすることができます。

異議申立人が異議申立手続では考慮されなかった有効な権利を保有していることが異議申立手続中に判明した場合は、出願変更は手続としては可能ですが、いずれ国内の審査で拒絶を受けることになりますから得策とはいえません。

所見

EUIPOの報告によりますと、現在出願公告されたEUTM出願の約20%は異議申立を受けています。

EU諸国で商標を現に使用する、または将来使用する予定という当事者は、EUTM出願にするか、またはマドプロ経由でEUTMを指定するか慎重に考える必要があります。さらに、競合する他人の商標がないかを調査して万一の場合は遅滞なく異議申立を行うようにすることが大切です。私共はそういう点で皆様にご協力できれば幸いです。

本インフォメーションシートは、あくまでも異議申立制度の概要であり、法ならびに実務の決定的なものでない点をご了解ください。

以前はOHIMとして知られています

2 以前は欧州共同体商標(CTM)として知られています

This information is simplified and must not be taken as a definitive statement of the law or practice.  Please refer to our English-language website for more information.

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