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欧州統一特許裁判所からのオプトアウト(適用除外)

欧州統一特許裁判所からのオプトアウト(適用除外)

イギリス政府は2018年4月に、欧州統一特許裁判所(UPC)協定を批准し、イギリスのUPCおよび欧州単一特許(EUP)参加を一貫して表明しています。しかしながら、イギリスが欧州連合離脱(Brexit)後にUPCシステムに留まることができるかについては、異なる見解があります。

基本的に、UPCおよび欧州特許出願者のEUP申請は、協定発効から3ヶ月後に開始されます。しかしながら、現在、Brexitに関する不確定要素やドイツでの異議申立により、開始時期は不明です。これらの要因により、ドイツの批准が遅れており、UPC協定の発効も遅れています。

すべての欧州特許は、自動的にUPCの管轄対象となります。しかし、特許権者および特許出願人はUPCからオプトアウト(適用除外)することも可能です。本インフォメーションシートでは欧州統一特許裁判所からのオプトアウトに関する概要、および考えうるメリットならびにデメリットについての、当事務所の考察を記載しています。本インフォメーションシートはEUPおよびUPCについてのインフォメーションシートに付随します。詳細については、これらのインフォメーションシートもご参照下さい。

現存する欧州特許および公開済の特許出願

既に付与済の欧州特許は、特許権者が「オプトアウト」しない限り、UPCの運用開始時に自動的にUPCの管轄下に入ります。

よって、すべての特許権者はそれぞれの欧州特許に関し2つの選択肢があります。

1) 何もしない(よって自動的にUPCの管轄下に入る、「自動適用」)、または、

2) UPCからオプトアウトする

オプトアウト手続には次のような特徴があります。

  • オプトアウト手続はUPC運用開始から最初の7年間のみ可能(5年後に行われる審査により、最大14年間に延長される可能性あり)。これ以降は、EPOにて付与された特許はすべてUPCの管轄対象となる
  • オプトアウトの効力は、適用された欧州特許の存続期間中持続する(オプトアウトが取り下げられた場合を除く、下記参照)
  • UPC協定発効(2018年初め~半ばの見通しだった)後からUPC運用開始前の間に導入期間があり、特許権者はこの期間にオプトアウトの申請が可能
  • UPCでの訴訟対象となった特許はその後のオプトアウト不可
  • オプトアウトの取り下げ(すなわち、特許をUPC管轄下に置くこと)はいつでも可能
  • (オプトアウト取り下げ後の)2回目の「オプトアウト」は不可、そして
  • 単一の申請による複数特許のオプトアウト「( 大口」オプトアウト)は可能と推測されるが未確定

両選択肢のメリットおよびデメリットは以下の通りです。

1. 何もしない、または「自動適用」

メリット デメリット
自動的に発生するので何もしなくて良い UPCにて訴訟提起された特許のオプトアウトは不可

UPCの詳細やメリット、デメリットについては、当事務所のUPCに関するインフォメーションシートをご参照ください。

2.「オプトアウト」

メリット デメリット
「従来通り」の手続きが可能 能動的にオプトアウトする必要があり、「大口」オプトアウトの可能性もあるが、現段階では不明
手続きや費用、質についての運用開始時の不確実性を回避 オプトアウトは全参加国に適用するか、全くしないかの選択肢しかない。すなわち、選択した一部の参加国のみについてのオプトアウトは不可
中央部で侵害訴訟の提起をしたい場合にいつでも「オプトイン(適用) 」可能 特許権者が複数存在する特許の場合、全特許権者からのオプトアウトへの合意が必要
オプトアウトに公的手数料は発生しない

オプトアウト手続は、現在公開中の欧州特許出願にも適用可能です。係属中出願のオプトアウトには、特許付与時にそれがUPC管轄下に入らないことを保証できるという小さなメリットがあります。しかし、出願人がEUP付与を希望する場合、付与前にオプトアウトの取り下げを行う必要が出てきます。

EPC規則第71条(3)に基づくEPOの通知書(欧州特許許可通知)への回答時に、EUPの選択、(従来の欧州特許の)指定の確定、そして欧州特許のUPC管轄からのオプトアウトの検討に関する決定を同時に行うのが賢明なようです。

特許ポートフォリオにおける選択肢は?

a) すべてを自動適用。この選択肢は、新制度を信頼する形となります。汎欧州の差止命令請求ができる可能性、早期段階で裁判所についての経験を得られる可能性、そして初期段階の判例法形成に影響を与えられる可能性があります。しかし、特に高価値の特許に関し、この選択肢は高リスクな戦略と見られるでしょう。

b) すべてをオプトアウト。この選択肢では、特許権者は最初の数年間、制度を適用する前に制度の展開を見守ることができます。特許権者は自身のポートフォリオを慎重に考慮し、一部または全部の特許に関して適用の要否を決定することができます(下記の選択肢c参照)。

c) UPC運用開始前に特許ごとに決定。特許権者は、例えば各特許の相対的な重要性および強さに基づき、オプトアウトの要否を決定することができます。例として、特許権者は、比較的弱い、非常に重要である、またはその両方に該当する特許はオプトアウトし、比較的強い、あまり重要でない、またはその両方に該当する特許は自動適用させる、という決定ができます。加えて、特許に異議申立がされた、またはされているかどうかも考慮に入れるべきでしょう。

「今後」の欧州特許

今後の欧州特許の申請戦略を検討する際に、EUPとUPCの導入も考慮する必要があります。特に、2017年後半から2018年に規則第71条(3)のEPC通知を受領する欧州特許出願は、(付与をUPC協定発効後まで遅らせることができれば)理論的には付与時にEUPに変換できる可能性があります。

全ての欧州特許権者には、それぞれの欧州特許出願の付与時に、3つの選択肢が発生します。

1. EUP + 任意で欧州連合非加盟国の欧州特許

2. 欧州特許 – 何もしない「( 自動適用」)

3. 欧州特許 – UPCからオプトアウト

これらの選択肢についての詳細は、上記と、当事務所のEUPに関するインフォメーションシートをご参照ください

国内出願はどうなりますか?

将来的には、(EUPと従来の欧州特許の両方について)EPOにより付与される特許はすべてUPCの管轄となります。これが起こり得る一番早いタイミングは、UPC発足から7年後(可能性としては2025年)です。

これ以降、UPCを回避する唯一の手段は、欧州内での国内出願となります。例えば、特許協力条約(PCT)に基づく出願をもって、イギリスやドイツの国内段階出願に移行させることが可能です。その結果として付与されるイギリスまたはドイツ特許は、UPCの管轄対象とはなりません。しかし現在、PCT出願のフランスへの国内移行は不可となっています。

メリット デメリット
UPCを完全に回避 フランスでは(現段階では)国内段階移行手続きが不可である為、12ヵ月の優先期間終了までにフランスについて決定する必要あり
EPOの単一審査および翻訳費用によるメリットの逸失(出願が約20ページ以上で、保護を希望する欧州国が3か国以上の場合)


This information is simplified and must not be taken as a definitive statement of the law or practice.  Please refer to our English-language website for more information.