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欧州単一特許

欧州単一特許

イギリス政府は2018年4月に、欧州統一特許裁判所(UPC)協定を批准し、イギリスのUPCおよび欧州単一特許(EUP)参加を一貫して表明しています。しかしながら、イギリスが欧州連合離脱(Brexit)後にUPCシステムに留まることができるかについては、異なる見解があります。

基本的に、UPCおよび欧州特許出願者のEUP申請は、協定発効から3ヶ月後に開始されます。しかしながら、現在、Brexitに関する不確定要素やドイツでの異議申立により、開始時期は不明です。これらの要因により、ドイツの批准が遅れており、UPC協定の発効も遅れています。

本インフォメーションシートでは欧州単一特許の概要、および考えうるメリットならびにデメリットについての、当事務所の考察を記載しています。本インフォメーションシートはUPCについての、およびUPC適用除外の選択肢についてのインフォメーションシートに付随します。詳細については、これらのインフォメーションシートもご参照下さい。

EUPについて

欧州特許の出願者は、特許付与時にEUPの適用申請が可能になります。これにより、特許付与時点において有効な「加盟国」を対象とする単一の特許権が付与されます。その他のEPC対象国に関しては、各国内での通常の欧州特許の有効化手続によりこれに含めることができます。

加盟国とは、EUP申請時点でUPC協定を批准している国を意味します。2017年4月現在で、14ヶ国がEUPの適用対象となっています。今後加盟国となる可能性のある国々は下表の通りです。

批准済または批准が義務付け
られた国(参加国になる予定)
未批准
オーストリア キプロス
ベルギー チェコ共和国
ブルガリア エストニア
デンマーク ギリシャ
フランス ハンガリー
イタリア アイルランド
ルクセンブルク リトアニア
マルタ ルーマニア
オランダ スロベニア
ポルトガル スロバキア
スウェーデン ポーランド2
フィンランド スペイン2
イギリス クロアチア3
ラトビア
ドイツ1

1: 未批准だがUPC発効前の批准が義務付けられている

2: UPC発効前の批准はしないと表明

3: クロアチアは最近欧州連合に加入しUPC協定加入権を持つが、未加入

しかし、UPC協定批准国数は2018年内に増加する見込みです。スロベニア、リトアニア、ラトビア、エストニアおよびハンガリーといった国々は、協定を批准する予定であると表明しています。よって、初期段階においておよそ20ヶ国がEUP適用国となると予想されています。

EUPに関する訴訟はすべてUPCで行われます。EUPをUPCから「オプトアウト」(適用除外)するという選択肢はありません。

EUP付与を受けるには?

EUP申請は、特許付与公開から遅くとも1ヵ月以内に行わなければなりません。すなわち、EUP申請は、EPOの欧州特許許可通知(EPC規則第71条(3))への回答後すぐに行わなければなりません。すでに付与済の欧州特許をEUPに変換する方法はありません。よって、現在EPC規則第71条(3)に基づく通知を受領している欧州特許出願案件が、EUP申請の機会を得る最初の出願案件となることが見込まれます。

EUP申請時に発生する官庁に対する手数料はありません。EUP申請時に(具体的には、特許付与公開より1ヶ月以内に)、欧州特許出願の翻訳を提出する必要があります。EUPにはEPOに納付する単一の更新手数料が発生します。翻訳および更新料について見込まれるコスト優位性は以下に詳述しております。

EUP申請を行った場合でも、UPC協定を(その時点で)批准していない国に関しての、欧州特許出願の有効化手続は依然として行う必要があります。例えばスペイン、スイスまたはノルウェーでの保護を希望する場合、有効化手続はやはり必要となります。

EUPで見込まれる翻訳および更新料についてのコスト優位性

EUPは、翻訳要件と更新料に関してコスト削減をもたらす可能性があります。

翻訳に関しては、移行期間中は、(欧州特許がフランス語またはドイツ語の場合)欧州特許の承認済み文書をすべて英語に、または(欧州特許が英語の場合)欧州内加盟国の異なる言語に翻訳する必要があります。

6年間の移行期間後(そして以後2年間隔で計12年間まで)、機械翻訳の性能が精査されます。機械翻訳の正確性が十分であると判断された場合、移行期間は終了となります。それ以降は、出願人による翻訳の提出は不要となります。

よって移行期間中は、全文書の翻訳が必要となる国少なくとも1ヶ国以上で通常有効化手続を行う特許権者に対しては、(その国にEUPが適用されれば翻訳が不要となるため、)コスト優位性をもたらすこととなります。

年度 UP特許年金案
(ユーロ)
年度 UP特許年金案
(ユーロ)
11 1460
2 35 12 1775
3 105 13 2105
4 145 14 2455
5 315 15 2830
6 475 16 3240
7 630 17 3640
8  815 18 4055
9 990 19 4455
10 1175  20 4855

最も高額な4ヶ国(ドイツ、イギリス、フランス、オランダ)における更新手数料とおよそ同水準の、単一の更新手数料が発生します。手数料の概算は以下の通りです。ここでのコスト優位性を享受するのは、通常4ヶ国以上で有効化手続を行う特許権者のみです。

もちろん、翻訳、更新手数料によるいかなるコスト上昇も、EUPによる保護範囲の拡大(イギリス、フランスおよびドイツを含む最低13ヶ国)を考慮すれば価値があるとも考えられます。
EUP制度のメリット、デメリットの要約は下表の通りです。


メリット デメリット

通常1ヶ国以上のロンドン協定対象外の加盟国で有効化手続を行う場合、移行期間中(最大12年間)は翻訳要件および費用が軽減される可能性あり

 

通常ロンドン協定対象国のみで有効化手続を行う場合、移行期間中の翻訳要件および費用が増大する可能性あり

グーグル翻訳の正確性が十分であるとの判断を受けて移行期間の終了後は、翻訳要件および費用負担が軽減

 

通常3ヶ国(例:イギリス、フランス、ドイツ)でしか有効化手続を行わない場合、更新手数料が増加する可能性あり

通常4以上の加盟国で有効化手続を行う場合、更新手数料が軽減される可能性あり

 

EUP申請時点で協定を批准していない欧州国(例:スペイン)は含まれない
イギリス、ドイツ、フランス、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スウェーデンおよびフィンランドを含む最低13ヶ国に適用

欧州連合加盟国ではないEPC加盟国は適用対象外(欧州連合離脱後のイギリスはこれに当てはまらない可能性あり)のため、これらの国での適用を希望する場合は従来通り有効化手続が必要

 

EUPは常にUPCの管轄対象となる

 

UPCからのオプトアウトは不可

加盟国に所在または居住する内容領域専門家(SME)、自然人、非営利組織、大学、および公的研究機関に対しては、翻訳費用の負担軽減を目的とした補償制度が設けられる

 

更新手数料の軽減を目的として、特許期間中に特定の対象国への保護適用を意図的に失効させることができない


This information is simplified and must not be taken as a definitive statement of the law or practice.  Please refer to our English-language website for more information.