欧州特許庁(EPO)が、特許を付与することに同意した場合、欧州特許権が発生するためには、多くの手順を行う必要があります。本ページの目的は、これらの手順を説明し、予想されるタイムスケールおよび費用を提示することです。本ページでは、特許付与手続の概要を示すフローチャートをダウンロードすることができるリンクを用意しています。
特許付与手続には、基本的な2つの要件があります。
a) EPOが特許を付与しなければならない、そして
b) 出願人が保護を求める指定国において、特許を有効化しなければならない。
この通知は、出願が特許許可されることを知らせるEPOからのレターです。通知には、EPOが提案する特許のテキストのコピーが添付されており、多くの場合、審査官が提案する補正が含まれています。以下の手続について期限が設定されています。
期限は延長できません。
クレームの翻訳文を作成する必要があるため、期限までに時間に余裕を持って指示をいただくことが私共にとって重要です。
私共が規則71(3)に基づく通知を報告する際には、各指定国において見込まれる手続費用の詳細な見積をお知らせします。この段階において、有効化する国を選択することができますが、最終決定は、特許付与まで待つこともできます。費用の削減のため、または特許が必要ではないという理由から、ある国では手続を進めないことを選択することもできます。
規則71(3)に基づく通知に対してテキストを承認する応答をした後、EPOは、別の通知である「特許付与の決定」を発行します。この書面は、EPOが、「特許証」を発行し、欧州特許公報に特許付与の詳細を公告する予定であることを通知するものです。特許付与の決定は、この公告がされる日付を知らせるものであり、この日付が特許付与の有効日となります。
特許証が発行されると、特許権者へ送付されます。また、特許付与の日から9ヶ月間、第三者が特許に対して異議申立をすることができる異議申立の期間があります。異議申立があった場合、私共から速やかにお知らせします。
「特許付与の決定」の後、希望する国で特許が効力を有するようになるためには、さらなる手続が必要です。2つのルートがあります。 1つは、単一効特許を取得することです。 もう1つは、各国で特許を有効化することです(「国内有効化」)。単一効特許と国内有効化とを組み合わせることで、欧州の希望する国々でこの特許を有効にすることができます。
2023年6月以降、出願人は、欧州連合の大部分(ドイツ、フランス、イタリア、オランダを含む)において、一つの「単一効特許」(Unitary Patent (UP))により、付与された欧州特許を有効にすることができます。単一効特許の申請は、特許付与日から1ヶ月以内に行わなければなりません。単一効特許に関する詳細は、こちらをご参照ください。単一効特許の申請書には、EU公用語の明細書翻訳文を添付しなければなりません。欧州特許出願が英語で審査され欧州特許が付与された場合は、EUの他の公用語のいずれか、例えばドイツ語やスペイン語の翻訳文を提出します。欧州特許出願がフランス語またはドイツ語で審査され特許が付与された場合は、英語に翻訳しなければなりません。(この翻訳要件は経過措置期間中のみ適用され、2029年6月には廃止されると予想されます)。
特許の有効化には、特許付与の日から3ヶ月以内に、選択した指定国においてすべての必要な手続をとる必要があります。
欧州特許条約(EPC)締約国の多くは、公用語の1つでの明細書全文の翻訳文をその特許庁に提出することを要求しています。(英語)明細書の翻訳文を要求する国は、以下のとおりです:
オーストリア | ポルトガル |
ブルガリア | ルーマニア |
キプロス | サンマリノ |
チェコ共和国 | セルビア |
エストニア | スロバキア |
ギリシャ | スペイン |
イタリア | トルコ |
ポーランド |
ギリシャ語の翻訳文をキプロスでも提出することができます。
英語の明細書の翻訳文を要求しない国は、以下のとおりです:
アルバニア* | リトアニア* |
ベルギー | ルクセンブルク |
クロアチア* | マルタ |
デンマーク* | モナコ |
フィンランド* | オランダ* |
フランス | 北マケドニア* |
ドイツ | ノルウェー* |
ハンガリー* | スロベニア* |
アイスランド* | スウェーデン* |
アイルランド | スイス |
ラトビア* | 英国 |
* これらの国は、クレームのみをその公用語に翻訳することを要求しています。
翻訳の要件に関する更なる情報については、ロンドン協定に関する私共のページをご覧ください。
多くの国は、出願人によって署名された委任状を要求します。
委任状を要求する国は、以下のとおりです:
アルバニア | リトアニア |
オーストリア | マルタ |
ブルガリア | モナコ |
クロアチア | 北マケドニア |
キプロス | ノルウェー |
チェコ共和国 | ポーランド |
エストニア | ルーマニア |
ギリシャ* | サンマリノ |
ハンガリー | セルビア |
アイルランド | スロバキア |
イタリア | スロベニア |
* ギリシャは、特許権者によるギリシャでの欧州特許の最初の有効化には、公証された委任状を要求します。
委任状を要求しない国は、以下のとおりです:
ベルギー | オランダ |
デンマーク | ポルトガル |
フィンランド | スペイン |
フランス | スウェーデン |
ドイツ | スイス* |
アイスランド | トルコ |
ラトビア | 英国 |
ルクセンブルク |
* 私共が提携するスイスの代理人は委任状が不要ですが、別の代理人を利用する場合には委任状が必要となり得ます。
欧州特許は、特許付与時に公告されます。
各国もまた、その公用語での翻訳文を公告します。
有効化の手続が完了すると、特許は、選択した国のそれぞれで有効化されます。また、特許は毎年更新する必要があり、私共は、当然ながらご要望に応じた対応をとります。私共は、費用を最小限に抑えるために、多くの特許庁へ更新手数料を直接支払います。
欧州特許出願は、EPC締約国ではなく、「拡張」国として知られている東ヨーロッパの一部の国においても特許になり得ます。また、非ヨーロッパ国数ヶ国(いわゆる認証国)においても特許を有効化することが可能です。特許付与時に、少なくともクレームの翻訳文を委任状と共に拡張国・認証国の特許庁に提出する必要があります。
特許付与手続の費用は、大きく変化し、また高額になることがあります。
費用は、翻訳にかかるばかりでなく、ある国は、特許の有効化に際して手数料の支払いを要求する一方、他の国は、公用語での明細書の公告手数料を要求します。翻訳費用は、特許明細書の文字数および頁数、そして翻訳を要する言語の数により、大きく異なります。
庁手数料や翻訳文提出が不要であり、代理人手数料のみを支払う必要がある国もあります。
私共は、規則71(3)に基づく通知の報告と共に、見込まれる費用の見積を送付します。
見積を作成するには、外国の弁理士からの過去の請求、ならびに承認されたテキストの単語数および頁数に基づき、各国における翻訳料、提出料、手数料および公告手数料の見込まれる費用を算出します。
私共は、高度に技術的であることが多い特許明細書の言語を正確に翻訳する専門知識に基づいて選抜された複数の異なる翻訳者を使用しています。翻訳作業は比較的困難な性質を有するため、一般的な商業的な翻訳者がより安価な翻訳レートを提供しているのを見かけることがあります。しかし、私共は、特許に不慣れな翻訳者を使うのはお勧めしません。不正確な翻訳は、特許の保護に深刻な影響を及ぼすからです。翻訳は、その国の弁理士により認証されなければならないとする国もあります。
フローチャート
特許付与手続にかかると見込まれる時間軸を示した特許付与手続のフローチャートは、以下のリンクからダウンロードすることができます。
特許付与手続のフローチャートのダウンロード
ここに示した情報は、簡略化したものであり、法律ならびに実務の決定的な情報ではありません。
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