かっては、一国で特許を取得しようと思えば、その国の特許庁に特許出願しなければなりませんでした。もし、ヨーロッパ全域で発明を保護したければすべての国に特許出願する必要がありました。しかし、1978年以降は、1つの欧州出願(EP出願)をすることで複数の国で効力をもつ欧州特許を取得することができるようになりました。
欧州特許制度は、簡単に、しかも安価に欧州特許条約(EPC)加盟国で特許を取得することを狙った出願の1つの選択肢です。加盟国は別表の通りです。EPC加盟国はかならずしも欧州連合(EU)に加盟しているとは限りませんが、現在のところEPCの加盟国はすべてEUに加盟しています。
欧州特許を取得すると、特許権者は指定国の国内特許権と同じ効力を享受することができます。
出願人は、EPC加盟国のどの国で特許保護を求めるかを選択することができます。一般的には、3ヶ国またはそれ以上の国で特許保護を求めたければ、EP出願は、各国別に出願するより経済的です。
EPCにおける特許要件の基本的な基準は、英国の基準とほぼ同じです。
EP出願は、欧州特許庁(EPO)に英語で出願することができます。出願から特許権付与まで中央集権的にEPOで手続は進行し、その間の出願人と特許庁とのやりとりはすべて英語で行われます。したがって、国別出願に比べて出願の費用もその後の中間手続の費用も安く済みます。理由は、国別出願では、ほとんどの場合、明細書も含め一切の書類はその国の言語で作成しなければならないからです。
EPOが特許付与を決定するには、通常、出願から3~4年かかります。特許付与が決定しますと、所定の方式上の要件を満たせばその特許権は各指定国において効力が発生することになります。
特許が付与されてから9ヶ月の異議申立期間があり、その間に何人も特許に対し異議を申立てることができます。
出願人は、会社でも個人でも構いません。いずれの場合も、出願人が特許を受ける権利を有する者であることを確認する必要があります。
出願は、“欧州特許弁理士”に委任して出願しますが、出願人が直接出願することもできます。“欧州特許弁理士”は、EPOとの対応や出願手続についての経験を有する特別の資格を持った職業的代理人です。
出願人(会社、個人)が、EPC加盟国のいずれにも居所や主たる営業所をもたない場合は、最初の出願書類の提出を除いて、手続全体を通じて欧州特許弁理士によって手続を行わなければなりません。
通常、EP出願は、同一の発明に対する先の出願(例えば、英国出願)に基づいた優先権主張を伴って出願されます。
優先権を主張するには、一定の例外を除いて、先の出願の日から12ヶ月以内にEP出願をしなければなりません。優先権主張は、先の出願日から16ケ月以内であれば行うことができます。
優先権を主張することによって、特定の規定の適用については、欧州特許出願が先の出願の時にされたものとみなされます。発明の特許性は、先の出願が発明について十分の情報を開示していれば、先の出願の時点でその発明が公知であったかどうか判断されます。この先の出願日を、EP出願の優先日といいます。たとえば、出願人が、優先日を確保するために、比較的出願費用の安い英国で、まだ開発途上にある発明について出願したとします。出願後、出願人は、さらに開発を進め、また、商業的に実現可能かか否かを確かめるための1年間の猶予期間を持つことができます。その結果をみて、EP出願に投資すべきか決定すればいいのです。
優先権主張せずにEP出願をすることもできます。また、特許協力条約(PCT)による国際出願を経由してEP出願することもできます。いずれを選択するかなどについては、ご希望であればもっと詳しくご説明します。ここでは、先の出願から12ヶ月以内に優先権を主張してEP出願する場合についてご説明します。
欧州特許を取得するためには、EPOに対しEP出願を行います。通常、英国特許庁を経由して行われます。
EP出願一式には次のものを含まなければなりません。
出願手数料は、出願と同時にEPOに支払わなければなりません。手数料が受領されると、出願日が確定し、出願番号が付与されます。EPOは出願人に出願受領書を送付します。
EP出願は、優先日から18ヶ月、すなわち、たいていの場合は現実のEP出願から6ヶ月後に公開されます。
発明の特許性に関係すると思われる文献をリストアップした調査報告書が発行されます。調査報告書は、間に合えば出願公開と一緒に公開され、間に合わなければ後で公開されます。
調査報告書には、クレームの特許要件に関する予備的見解を含めた調査見解書が添付されます。そしてこの調査報告書の公開から6ヶ月以内に調査見解書への応答が必要になります。
また、この6ヶ月以内に指定手数料の納付をもって指定国を確定しなければなりません。この後は指定国の増加はできませんが、削減は可能です。
さらに、この6ヶ月以内に審査手数料を支払わなければなりません。実体審査に入ると、EPOは、出願発明に新規性がないもしくは進歩性がない理由を、または、方式上の不備を、出願人または代理人がいる場合は代理人に通知します。応答期限が設定され、出願人は、発明が特許に値するものであり、出願は特許許可されるべきであるとEPOを説得する機会が与えられます。発明の詳細な説明やクレームの補正は、合意に至るまでに行わなければなりませんが、時間がかかることも、またさらなるEPOからの通知が発送されることもあります。
EPOは、出願発明が特許性ありと認めたとき、特許を許可します。
付与手続には次の2段階があります。
A. 特許が許可されると、欧州特許付与するために更に特許付与手数料等の納付と、クレームの翻訳文を提出しなければなりません。
B. 付与された欧州特許は、指定国においてのみ有効になります。指定したEPC加盟国によっては、クレームと明細書の全文を指定国の公用語に翻訳する必要があります。特許の翻訳には費用がかかります。欧州特許をどこの国で効力を発生させたいかによりますが、費用対効果も考慮する必要があります。
特許許可から9ヶ月間、何人も特許の異議申立を行うことができます。もし、特許異議申立を受けたら応訴することで特許を守ることができます。
出願の係属を維持するためには、毎年更新手数料を支払わなければなりません。最初の更新手数料納付は、EP出願後2年から始まり、以後毎年支払う必要があります。
一旦欧州特許が付与されると、欧州特許は各国の国内特許権となります。毎年の更新手数料は、各国の特許権を有効に保つため各国に支払わなければなりません。存続させる必要がないと思う国は、1国でも複数国でも特許権を放棄することができますが、そのことが他の国で有効な特許権に影響を及ぼすことはありません。
一旦欧州特許が付与されると、各指定国において権利行使が可能となります。ただし、翻訳文が提出され、更新手数料が納付されていなければなりません。各指定国において、許可なく特許発明を実施する者は、その特許権を侵害することになります。
訴訟手続は、各指定国において委任した代理人によって権利者の名のもとに提起されます。訴訟は、国別に行われる必要があります。
欧州特許が付与されるまでは侵害訴訟を起こすことはできません。しかし、一旦特許が付与されれば、出願公開日に遡って損害賠償を請求することができます。
欧州特許弁理士は、明細書の作成も含めて欧州特許を取得するためのすべての手続を行うことができます。
欧州特許弁理士を利用すれば、短期的にみれば出費増かもしれませんが、しっかりした特許権を取得することにつながります。欧州特許弁理士は、依頼人の発明を許可なく他人に話すことを禁じる職業的行動規範に拘束されています。
私共は、英国、欧州、その他世界各国の特許だけでなく、他の知的財産、例えば商標権、著作権、意匠権、実施権、訴訟について助言を行うことができます。
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リヒテンシュタイン1 | 英国 |
上記の国全部または一部を1欧州特許出願で指定することができます。
下記の諸国にも欧州特許権の効力を拡張することができます(拡張国2)。
ボスニア・ヘルツェゴビナ
モンテネグロ
さらに、下記の非加盟国でも欧州特許権を有効化することができます(認証国2)。
カンボジア
モロッコ
モルドバ共和国
チュニジア
1 スイスとリヒテンシュタインは1指定国と数えられます。
2 これらの拡張国および認証国は、欧州特許出願における指定国のように指定はできませんが、各国の国内法は、欧州特許が付与する権利の自国への拡張および認証について規定を設けています。これらの国について関心がありましたら、ご連絡ください。更なる情報をご提供します。
European Patents - The Basics Flowchart_JP
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